異母妹
ワタシは公爵令嬢。お父さんが公爵なの。
お母さんは平民だったけど、お父さんの正妻が死んでようやく公爵夫人になれたの。お父さんの正妻とさっさと離婚してってお母さんがずっと言ってたけど、貴族の法で簡単に離婚出来ないんだって言ってた。でも正妻が死んだから、お母さんとワタシが公爵家に入れたの。
でもね。そこには正妻の子が居たの。ワタシの姉だって。ズルイのよ。綺麗な服着て。髪の毛サラサラで。ツヤツヤで。肌もツルツルで。まるでお人形さんみたいなの。ワタシだってお父さんの子なんだし、公爵令嬢になれたんだから直ぐにお人形さんになれる、と思っていたんだけど。
平民として暮らしていた時が長かったからか、直ぐに髪はサラサラにもツヤツヤにもならないし、肌もツルツルしなくて全然お人形さんになれないの。
悔しくて悔しくてお父さんとお母さんに「ワタシもお人形さんみたいになりたい!」 って言ったの。そしたら可愛いドレスや宝石がいっぱいついたドレスなんかもお父さんが買ってくれたの。それを着たらお人形さんみたいになったわ! だから姉に言ってやったの。ワタシだってお人形さんなのよ! って。でも姉はチラッとワタシを見ただけで何も言わなかった。
それがもっと悔しくて。
だからお父さんとお母さんに姉から意地悪されてるって言ったの。お父さんもお母さんも信じてくれて姉を怒った。でも泣かないし表情も変わらないから、お父さんがほっぺたをぶってたの。あはは。いい気味。でも姉はやっぱり泣かないし、なんにも反応しなくて、なんだか気味が悪かった。
その後、ワタシは公爵令嬢にフサワシイ勉強をしてマナーも覚えなくちゃいけない、とか言われたんだけど、そんな直ぐに出来ないからお父さんに泣きついて出来ないって言って、お母さんに姉がいるからやりたくないってワガママ言って。そのうちお父さんとお母さんからワタシと別行動をするように言われてた。それでもやっぱり表情が変わらなくてコワイよね。
そうしているうちに、学園に行くことになったけど、勉強出来ないしマナーも分からないワタシ。最初は友達が出来なかったんだけど、ふと思い付いたの。
「姉が意地悪でお勉強もマナーも覚えられなかった」
ってウソをつくこと。
みんなそのウソを信じて、姉の悪口を言いながらワタシをナグサめてくれてワタシの味方をしてくれて。そうして友達が出来たの。
そのうち、学園で姉が第一王子様と第二王子様の婚約者になるんじゃないかって聞いたの。
は??? なんで???
あんな泣きもしない表情も変わらない勉強だけ出来るお人形さんになんか、王子様と結婚出来るわけないじゃない。
そう思ったから、お友達と一緒に姉にダマサれている王子様達に、姉から意地悪されていることとか、ワタシの方が可愛いから同じ公爵家ならワタシが婚約者でもいいはずだとか、人形みたいに表情が無いコワイ人だとか、そう言っていたの。でも、王子様達は姉にダマサれていて、姉ばかり信じるからちっともワタシの言うことを聞いてくれないの。
そんなの、オカシイと思うわ。
だから、ワタシは姉に言ったの。
「王子様達をダマスのはやめて。あなたが王子様達と結婚出来るわけないんだから!」
って。
姉はいつものように表情を変えずに、ワタシやお友達をチラッと見て、何も言わずにいなくなろうとしたの。だから「待ちなさいよ!」 ってワタシのお友達が姉を行かせないように止めたの。
そうしたら姉が言うのよ。
「第一王子殿下も第二王子殿下も、筆頭公爵家の血を引く令嬢との婚約を望んでいる。それだけのこと。騙すなんてしていません」
ムズカシくて分からなかったけど、公爵家の女の子なら、ワタシだって良いはずなのに! ワタシがそう言う前に姉はさっさといなくなってしまった。何よ、ワタシに文句を言われるのがコワくてにげたんだわ!
「にげたのね!」
ワタシが言ったら、お友達の一人が、姉を追いかけて行ったって別のお友達が教えてくれた。そのお友達が姉をまたワタシのところへ連れて来てくれるって思っていたのに。
姉もお友達も帰ってこなかった。
もう学園に残れない時間だから帰ることにしたけど。公爵家に帰ったら姉はもう家にいて、でも家族にも誰にも会いたくないって言ってるらしかった。
きっとワタシのお友達に言われたことでハンセイしているんだわ。
ワタシはそう思ったし、お父さんもお母さんもワタシの話を聞いて「ようやく反省したのか」 と言っていた。
それから十日すぎて。
ワタシは一人の男性に会うまで、自分は正しいって思ってた。
ワタシは知らなかった。
ワタシには姉だけじゃなくてお兄ちゃんがいたということ。だって、ワタシが公爵令嬢になった時にはリュウガクしていて知らなかったから。
でも。そのお兄ちゃんがワタシとお母さんだけじゃなくてお父さんよりもエライなんて……知らなくて。そして姉の味方なんて……知らなかった。
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