表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

第二王子

 生まれた時から片割れは思考がおかしいのか精神面がおかしいのか、双子だと思われるのが恥ずかしいくらい異常だった。力で支配する、というより気に入った物は壊したいという人間性。どう考えても異常。気に入った物は大切にするべきじゃないか。

 立場が王子だからか、僕の周りは常に人が溢れていた。男も女も老いも若きも。この人達は僕の味方、と物心ついた時に覚えたから愛想良く常に笑顔を振り撒いていた。それが悪かったのは、男相手。

 男の使用人達は三通りに分かれた。大部分は愛想良く笑う僕を見下して懐柔して甘い汁を吸おうとするもの。これは適当に遇らえたから問題ない。問題は残り二通り。一つは愛想良く笑う僕を嫌悪して常に王族である事に自覚を持たせようと口煩いどころか手を出して言うことを聞かせようとする奴等。まぁこういう奴等は退けるか王子として必要な勉強や剣の練習を見せておけば黙らせることが出来た。厄介なのは三通り目。顔が美しい部類の僕……まぁ双子の片割れも同じ顔だから対象としては変わらないだろうけど、あっちは愛想なんて無いから僕なのだろうが、僕を性愛対象に見て来る男達が居たということ。実際、何度か迫られたがどれだけ幼くても王子という身分を相手に振り翳せば、相手は恐れて退いたから安堵出来た。


 でも、多分この経験が僕の人生を変えたのだろう。

 男には愛想を振り撒かない。女ならば老いも若きも身分が高くても低くても構わない。男なのだから同じ男から性愛対象や恋愛対象に見られたいとは思わない。僕の対象は女であるし、女にもそう見られるのは抵抗が無い。そのまま僕は成長した。僕の愛想の良さを嫌悪していた奴等を黙らせるために勉強やら剣やらに打ち込んで来たからか、女達は常に僕の周りに侍っていたし、国王の座に着く条件は揃っていた。おまけに我が国の法として国王は側妃や愛妾を迎える事を許している。まぁ正妃を迎えてからじゃないと側妃も愛妾も迎えられないが。


 でも、国王にさえなれば僕の博愛精神は死ぬまで否定されないわけだ。僕の実力なら国王の座は狙える。まぁ双子の片割れも狙っているみたいだが、あんな精神異常の奴が国王になったら臣下達が苦労するし国民も疲弊しそうだよ。女性は誰でも愛する対象の僕が国王になる方が絶対良いに決まっている。

 ただ。

 僕が国王になるためには正妃が必要。

 正妃になれる存在は、ツェリ嬢しかいない。現在のところ筆頭の座にある公爵家の令嬢だし、綺麗な顔立ちはそれだけで価値があるし、賢いし、誰に対しても平等に接することが出来るから、きっと僕が側妃や愛妾を迎えても嫉妬なんてしないで平等に接してくれるはず。彼女じゃなければ正妃になんてなれない。他の子だと後ろ盾は兎も角能力はツェリ嬢に劣るし、何より嫉妬深いから誰であっても側妃や愛妾と上手くやっていけないから。


 他の子達には王妃教育は大変だから……と宥めてツェリ嬢を正妃にすることを納得してもらい、ツェリ嬢に何度も何度も求婚してるのに冷たい態度しか取られてない。この僕が一番好きだから、と言ってあげているのに。

 女達の誰よりも一番上なんだよ? だけどイイ返事は一向にもらえない。

 顔良し、地位良し、性格良し、執務に公務も出来ちゃうこの僕なのに。何が気に入らないんだろう。ああでも、片割れからも求婚されているから、そう簡単に返事は出来ないのか。じゃあどうしようかな。どうしたらツェリ嬢を攻略出来るかな。そうだ。恋は駆け引き。押すだけじゃなく偶には引いてみよう。いつも僕から声をかけていたからね。その僕からの声がけが無くて不安になり、ツェリ嬢から僕に声を掛けてくるようになるかも。


 そんな風に僕が考えて距離を取った頃。片割れもツェリ嬢から距離を取っていたなんて知らなくて。


 ツェリ嬢は僕の周囲の女達から嫉妬されていたのは知っていたけど、ツェリ嬢なら何とか出来ると思って甘く見ていたからなのか。それとも僕と片割れが距離を取った隙を狙ったのか。

 ツェリ嬢が窓から身を投げた、と学園で噂になっているのを聞いた。急いで人に調べさせるとそれが本当だと知った。身投げをするなんて、一体何があったのか……。ツェリ嬢が学園に来たら尋ねてみるといいだろう。取り敢えず、お見舞いとして花とお大事に、というカードくらいは従者に出してもらえばいいか……。


 だが、予想に反してツェリ嬢はいつまで経っても学園に復帰することがなく。状況を把握する前に、ツェリ嬢の兄が帰国して、ようやくツェリ嬢の状況を知った。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ