高揚
二人で車の中、何か次への一歩の手がかりへ。
助手席に乗った綾子の横顔に見とれた秀樹だが、ふいに綾子が目を合わせドキッとした。
軽く微笑む綾子に対し、余計に愛おしさを感じた。
「駅までお願いいたします。」と、綾子に言われたが、
「どこに住んでるんだっけ?保育園まで送るよ。」と、少しでも長くこの時を続けたいだけで出た言葉である。そんな自分の偽善ぶりに気づかない綾子は、
「仕事中に悪いですよ。駅までで本当に助かります。」
秀樹を横から見つめながら、優しく微笑んで答えた。
「仕事は大丈夫。それより急いで迎えに行こうよ。」
そんなに必死になって、綾子との時間を作ろうとする自分に少しおかしくなった。
「じゃあ、お言葉に甘えて、東王子駅まで、お願いします。その近くなんですよ。」
「了解!」大きな声で答えたので、綾子はビックリして、間をおいてニコッと秀樹を見つめた。
車で30分もかからないところだ。
緊張しているのが綾子にばれないように、ゆっくり呼吸して落ち着かせようとしたが、
「そうだ。ちょっとお茶買うね。」と、自販機で買い一本を綾子に手渡す。
指先がふれた。
自然と、どちらからともなく手を握っていた。
秀樹と綾子の今後は。