案内人
投稿スピード激遅じゃなぁ…。ま、まぁすぐに慣れるじゃろうて!
「道に迷ったわァ」
オカマは死んだ目をしながら言った。走っていた足は途中から歩きになっている。だが依然と女は脇に抱えられていた。
「えぇ!?あんなに自信満々に歩いてたのに!?」
「だってドコ歩いても炎から抜け出せないんですものォ。これがアツいのなんのって」
まぁ始めから知らない土地だったのだが。真っ直ぐ歩いてたら何かしら集落が見つかるだろ方式で走っていたオカマは、いつまでも炎の続く光景で辟易としていた。
「私は貴方のきったねぇモノを見ないよう必死に顔上げてるんだけど、それだけで疲れてるんだけど!!」
「アナタねェ…。ずっと抱えられてる状態で恥ずかしくないワケェ?」
依然周囲には“地面が”燃え続ける炎しかないが、これが街中だと即警察が来ることだろう。誘拐というにはオカマ自身だけでも案件なのだが()なんだよ半裸って。
「かれこれ体感2時間はこうなってるし。人もいなさそうだから問題ないのよ!歩くよりは楽だしね!!」
「アナタも大概図太くなったわねェ…」
「あ、ちょっと待ってください前から人が」
前方炎の向こうに人影が見えた。
「離さないわよォ」
「え、ちょっ」
抱える手に力がはいる。女はみじろぎをしたが、しばらく体を動かさなかった弊害で上手く抜け出すことはできなかった。そうこうしている内に、相手の顔がハッキリと見えてくる。
「こんばんわ。アナタはここの原住民かしらァ?」
…原住民?と女は思ったがスルーした。相手もはてなが浮かんでいたが一応言いたい事が分かったのか気を取り戻した。
「違うワァ。あたしは『此処』の案内人ヨォ?あなた達を迎えにきたのヨォ」
一言聞いて分かった。こいつもオカマだ─
「聞き取りずらい!!もっとマシな喋り方はなかったの貴方達!!」
女からしてみれば完全にアウェーなのである。今までこんな事はなかった。オカマに挟まれた人生なんて1度もなかった。どうしてこうなった…。
「…これは生まれつきなのヨォ。付いてきて頂戴ネェ」
案内人と名乗ったオカマは踵を返して真っ直ぐ歩き始めた。この炎の中、なんの目印もないはずなのにズカズカと歩いていく。女はさっきまでのオカマを思い出して「こいつもか」と思ったが考えないことにした。自称案内人という胡散臭いオカマを信じるのもアレだが、なんの情報もないまま歩き回るのももう勘弁だ。まぁ1歩も歩いてないけど。
「…ところでそれはデフォルトの歩き方なのかしラァ?」
「そんな訳ないじゃない!!ほら!さっさと降ろしなさいよっ!!」
「死なば諸共よォ…?」
「エッ」
エッ。
「……まぁいいワァ。そろそろ着くわヨォ」
未だに炎しか見えていないが、なにがあるのだろうか?女は目を凝らすが、炎の他に何も見えなかった。…と、前方に注意を向けていると後ろから音がし始めた。
『どたどたどた』
いち早く気付いた女が後ろを向こうとする。…が、オカマによって固定されている女は90度以上の視界を得ることができなかった。そうしている内に次第に音は大きくなっていく。ようやく気付いたオカマが振り返る。
「…?なんか後ろがうるさいわねェ?」
先行していたオカマもようやく耳に届いたのか、後ろの様子を見ている。
「…!走るわヨォ!」
目を見開き、「まさか」と小声で呟いていた。 こちらのオカマはなんの事だか分からないまま足を早める。
「え、なになにどしたの!!?」
「後ろから何かが追いかけてきてるわァ!!?」
ごめんね。と呟いた案内人は、後ろを真剣な眼差しで見据えていた。オカマ(主人公)は何かを察したのか案内人を見ている。
「この先を真っ直ぐ言ったところに神社があるワァ。そこで願い事をするのヨォ」
ぽつりと呟いた案内人はどこか寂しげだった。先程までの様子とは違う案内人に、女も思わず息を飲んだ。その間にも後ろから近づく音は大きくなってくる。それは1つではなく無数の‘足音’のようだった。
「アナタは…?」
「アタシはここで後ろの奴らを食い止めるワァ…」
その言葉には確固たる意思があった。案内人の目は死んでない。生きようとする目だった。
「くッ…死なないでねェ!」
「お互い様ヨォ」
後ろに向かって走り出す案内人。その背中はとても大きかったと後にオカマは語る。
「え、なになに何が起きてんの??」
そして未だに何も掴めてない女。とりあえず走り去っていく案内人を見届けようとしたが、前を向いたオカマによって遮られてしまう。思わずオカマを見上げたが、オカマは清々しい顔で正面を見据えていた。なにその顔超ムカつくんですけど。
「ウオォオオオオオ!!!「「「アラヤダァ」」」」
後ろから案内人の雄叫びが聞こえた。それと同時に生じたキモっちわるい悲鳴。女は悟った。あれらもオカマなんだろうな─と。
「…なにいまのきっしょ」
「行くわよォ。アイツが作ってくれた時間を無駄にしない為にねェ」
オカマは何を言ってるのだろうか。女には理解できない。どうして私はここにいるのだろう。女は理解できない。どこに向かってるのだろう…。もう女には思考する力はなかった。
「……えぇ…?」
ただ、声を振り絞って疑問のような吐息を出すのが精一杯だった…。