ルシフェル
一話です。
よろしくお願いします。
世界を創ったという始まりの神は既に死に、現在天を収めているのは天帝と称される継ぎ者である。
統率者は変われど、生まれてくる天使の流れは変わることなく、《襲天使》という既に名と役職が定められている天使がいる。有名所は最上位である熾天使の中でも1番に座する《四大天使》だ。ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ミカエルであろう。襲天使にも様々いるが、四大天使を天帝以外に先導を許された者がいる。それが天使長ルシフェルだ。
「あの方魔界に憧れているんだってね」
「生まれた時かららしい」
「弟のミカエル様は、日々魔界から天をお守りくださっているというのに」
「ウリエル様も大変ですね」
木漏れ日の指す部屋で、分厚い神罪書を読む者がそこにいた者に問われた。
「いや、仮にも天使長だ。憧れはあれど私達の光でもある。下につくものがあの方を信じずしてどうする。」
「そうですね。何に憧れを持つかは皆それぞれでしょう。あの方も日々お役目を全うされておられる。皆考えすぎなのでしょうね」
と一つ笑みを作り、その部屋を去っていった。
「だってね、天使長ルシフェル様。」
ウリエルが半分だけ開いていないカーテンをめくると、そこには窓からの日差しに反射して輝く美しい金髪と、大空が入っているような青い瞳の娘がいた。
「しょ、しょうがないじゃん。一回でも魔界に行けたら、この憧れも消えるかもしれないけど。それに、天界せますぎ!! もう飽きた!!」
「はは、まぁ天界の面積は魔界の1/5あるか、ないかだしね。天界は基本的に晴れてて、ゲリラ的に雨が降ったりもしないし、何よりあちこちの自然も全部天帝の魔力で保たれてるから、手入れも必要ない。無駄に働かなくていいから、俺は楽だけど」
社畜め!なんて、ルシフェルは叫んでやりたかったようだ。ウリエルのお役目は天に反したものを捌くこと。裁判だらけでろくに休んでないから、そう言えることなのだろう。
「私暇しかないし。自由に動けるのに、なんで魔界に行けないのよ。」
「天使長だからだよ。天使長を危ない目に合わせるわけにはいかない。だから、下位の俺たちがお前の代わりにならなければならない。」
それがもっともらしい答えだった。だから、ルシフェルは一瞬言い返すのをやめて、口を固く閉じた。
「まぁ、俺が育てただけに、なかなか我慢強く育ってくれてよかった。」
ウリエルは、柔らかい表情をして、ルシフェルの頭を撫でた。
ルシフェルが生まれた時、既にウリエルは審判者としてお役目を遂行していた。ルシフェルを天使長とするためにウリエルは育ての親となり、それもウリエルとしてのお役目なのだと言う。
お役目であろうと自分を育ててくれたウリエルに、ルシフェルは恩があった。だからこそ、何も言い返せなかった。
「それでも、いつか絶対魔界に行くから」
とルシフェルは拗ねた顔をして、出ていった。
次話もよろしくお願いします。