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君恋ふる 涙の床に 満ちぬれば
藤原興風
君恋ふる 涙の床に 満ちぬれば みをつくしとぞ 我はなりぬる
(巻第十二恋歌二567)
※みをつくし: 船に水先案内のため、水脈の標識として水の中に打った杭 (澪標)で、「身を尽くし」を掛ける。
貴方を思う涙が床に満ちてしまって、私は身も心も尽くしても、全く動きのできない澪標になってしまいました。
※藤原興風:生没年不詳。三十六歌仙の一人。古今集初出(十七首)。勅撰入集計四十二首。百人一首に「誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに」が採られている。




