88/289
朝な朝な 立つ河霧の 空にのみ
よみびとしらず
朝な朝な 立つ河霧の 空にのみ うきて思ひの ある世なり
(巻第十一恋歌上513)
※朝な朝な:毎朝。
毎朝に立つ河霧が空に浮かぶように、私の心はまるで落ち着かない、そんな日々を過ごしております。
河霧は、万葉集以来、恋の悩みの象徴。
いわゆる強い恋愛期、相手が近くにいなければ、心配で仕方がない。
四六時中、相手のことを思ってしまい、心は上の空、全く落ち着かず、他の事もまともには、手につかない。
そんな思いをあらわした名歌と思う。




