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種しあれば 岩にも松は おひにけり
よみびとしらず
種しあれば 岩にも松は おひにけり 恋をし恋ひば あはざらめやは
(巻第十一恋歌上512)
種さえあれば、固い岩の上にさえも、いつかは松は生えるものなのです。
恋心を諦めなければ、逢えないなどということは、ありえないと思うのです。
岩や松は、長寿や長期間を象徴する言葉。
どれほど長い時間がかかるとしても、恋心を諦めなければ、恋は成就する、成就するはず、との強い信念を詠う。
ただ、それほどに難しい恋であって、懸命に自分を慰めている感もある。