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涙川 なに水上を 尋ねけむ
よみびとしらず
涙川 なに水上を 尋ねけむ 物思ふ時の 我が身なりけり
(巻第十一恋歌上511)
※水上:水源
涙川の源など、なぜ探すのでしょうか。
物思いをする時の、自分自身がその源なのに。
涙を流しながら、その原因を探す。
何かの困るような事態なのか、あるいは失恋か。
作者は途中まで考えて、あれこれと物思いをしている時の、自分の心が原因と悟る。
誰彼に問題があって、泣いているのではなく、自分の心が泣いていると悟る。
結局他人を責められず、自嘲しているような、辛さを感じさせる歌と思う。




