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いで我を 人なとがめそ おほ舟の
よみびとしらず
いで我を 人なとがめそ おほ舟の ゆたのたゆたに 物思ふころぞ
(巻第十一恋歌上10-508)
※いで:相手への呼びかけ。さあ、さて、など。
※ゆたのたゆたに:ゆらゆらと揺れ動く様子。
さて、誰も、私を責めないでください。
大船がゆらゆらと揺れるように、物思いに揺れている時なのですから。
恋歌に入っているけれど、どこかユーモラスな歌。
最後の句「物思ふころぞ」があって、ようやく恋歌であるとわかる。
また、「ゆたのたゆたに」も、波に揺れる表現として、実感がある。




