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思ふには 忍ぶることにぞ 負けにける
よみびとしらず
思ふには 忍ぶることにぞ 負けにける 色にはいでじと 思ひしものを
(巻第十一恋歌一503)
強い恋心に、忍ぶ心が負けてしまいました。
決して誰にも知られないようにと思っていたのですが。
※この歌も源氏物語明石に引用されている。
光源氏が明石の君に対して手紙を書く。
「をちこちも知らぬ雲居に眺めわびかすめし宿の梢をぞ訪ふ」
(どちらとも分からない旅の空に目をやり、物思いに沈んでは、ほのかにお噂にうかがった宿の梢を霞のかなたにおたずねするのです)
の歌の後に、
「『思ふには』とばかりありけむ」
(思ふには・・・恋心の強さに我慢できなくてとだけあったでしょうか)
※拾遺集恋一、平兼盛。百人一首の本歌。
「しのぶれど 色に出にけり 我が恋は ものや思ふと 人のとふまで」




