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恋せじと 御手洗川に せし禊
よみびとしらず
恋せじと 御手洗川に せし禊 神は受けずぞ なりにけらしも
(巻第十一恋歌一501)
※御手洗川:神社の傍らにあり、参拝者がその身を清める。
※禊:水により、罪やけがれを清める。
もう二度と恋はしませんと御手洗川で禊ぎまでしたのですが、神はお受けにならないままのようです。
難しい恋に悩んだ人が、御手洗川で禊ぎまでして神に願掛けをしたけれど、恋心は尽きなかった。
それで、私の願掛けを神がお聞き入れにならなかったと嘆く。
願掛けをしたところで、受ける受けないは、神の勝手。
作者の嘆きが聞こえて来るような、切ない歌と思う。
※この歌は伊勢物語の第六十五段では、「在原なりける男」が詠んだとされている。




