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別れてふ ことは色にも あらなくに
人を別れける時によみける
紀貫之
別れてふ ことは色にも あらなくに 心にしみて わびしかるらむ
(巻第八離別歌381)
人と別れる時に詠んだ
別れということは、色ではありません。
しかし、どうして、これほど心にしみいって、悲しくなるのでしょうか。
「しむ」は「染む」で、通常は衣服などを色に染めること。
この歌の場合は、別れの悲しい思いが、自分の心を深く染めてしまうというもの。
寂しいとか、憂鬱とか、そんな思いを「ブルーな思い」と、現代の歌謡曲にも見られる表現である。




