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朝なげに 見べき君とし たのまねば
ひたちへまかりける時に、藤原のきみとしによみてつかはしける
寵
朝なげに 見べき君とし たのまねば 思ひたちぬる 草枕なり
(巻第八離別歌376)
常陸の国に行く時に、藤原公利に詠んで贈った歌。
貴方は頼りにならないお方、結局、常にお逢いできるような関係には至らず、私も思いを断ち切りましたので、旅に出ることにいたしました。
おそらく、父が常陸の官職を得て、娘の寵が、それに従って旅に出たのだと思う。
そこで、あてにならない藤原公利に、三下り半をつきつける。
女性からの珍しい別れの歌となる。
尚、藤原公利は延喜初年頃に備中介。卑官、伝未詳。
また、作者寵は生没年不詳、親も諸説あり、不明。




