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紅葉せぬ ときはの山は 吹く風の
紀淑望
紅葉せぬ ときはの山は 吹く風の 音にや秋を 聞き渡るらむ
(巻第五秋歌下251)
※ときはの山:山城の歌枕。京都市左京区の妙心寺の西、左大臣源常の山荘があった丘陵説、京都府右京区常盤にある山説、単に常緑樹からなった山と考える説などがある。
秋になっても紅葉とならない常盤山は、吹き渡る風の音に、秋を聞き続けることになるのでしょうか。
秋になると空気も乾燥して来るので、確かに、風が葉を揺らす音も変わる。
常盤山で、不変な印象もあるけれど、何かが変わり、それを味わっている。
作者紀淑望は、生年未詳~延喜十九(919)。著名な漢学者紀長谷雄の子。
古今和歌集の真名序の作者。古今和歌集の編者の一人。
古今和歌集と新古今和歌集に各一首のみ入集。