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鳴き渡る 雁の涙や 落ちつらむ
よみびとしらず
鳴き渡る 雁の涙や 落ちつらむ 物思ふ宿の 萩の上の露
(巻第四秋歌上221)
鳴きながら大空を渡っていく雁の涙が落ちたのでしょうか。
心悩む人の庭の萩の上に、たっぷりと露があるのです。
萩の上の露を雁の涙と見るけれど、作者自身が心を悩ませている。
この歌は、藤原定家が、古今和歌集の歌のうち十本の指に入るものとして評価。
また、藤原俊成(定家の父)が
「聞く人ぞ 涙は落つる 帰る雁 鳴きてゆくなる あけぼのの空」
(雁の涙を詠んだ歌があるけれど)その鳴き声を聞く私のほうが泣けてしまう。
雁の鳴きながら帰り渡っていく曙の空を見ていると。
の元歌として引いている。




