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秋萩に うらびれをれば あしひきの
よみびとしらず
秋萩に うらびれをれば あしひきの 山下とよみ 鹿の鳴くらむ
(巻第四秋歌上216)
※あしひきの:山にかかる枕詞。
秋萩を見ながら、物思いに苦しんでいると、山のふもとを響かせて、鹿が鳴いているようだ。
作者が何故物思いに沈んでいるのかわからないけれど、萩と鹿が出て来ることから、恋の悩みとするのが妥当。(万葉集以来、萩は鹿の妻と見られていた)
作者の恋の悩みを、山のふもとに響き渡る悲し気な鹿の鳴き声が、ますます悲しく辛くさせてしまう、そんな歌意と思う。