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白雲に 羽うちかはし 飛ぶ雁の
よみびとしらず
白雲に 羽うちかはし 飛ぶ雁の 数さへ見ゆる 秋の夜の月
(巻第四秋歌上191)
訳は不要なほどに、わかりやすく、美しい秋の名歌。
月の光が明るく、空気も澄んだ夜。
その夜空を、雁が仲良く羽を連ねて飛ぶ。
その雁の数まで数えられる、そんな余裕。
秋の夜の、最高に落ち着いた贅沢な時間。
現代の都会暮らしでは、なかなかお目にかかれない風景。
ビルは高く、空も狭い。
ビルに遮られて、月でさえ、なかなか見られない。
せめて、この歌の中に、秋の絶景を感じることにする。