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寝るがうちに 見るをのみや 夢と言はむ
あひ知れりける人のみまかりにける時によめる
壬生忠岑
寝るがうちに 見るをのみや 夢と言はむ はかなき世をも うつつとは見ず
(巻第十六哀傷歌835)
お互いによく知り合った人が、お亡くなりとなり、詠みました。
寝ている時に見るものだけを、夢というべきでしょうか。
この、はかない世の中であっても、現実とは思えないのです。
特に親しい人が亡くなった場合、とても現実と信じたくない。
この際、亡くなった人が夢に出て来れば、夢の中を現実として暮らし、こんな無常な現世と逆にしてしまいたい、そんな心理だろうか。
あり得ないことではあるけれど、親しい人の死に際して、同じ思いを持つ人も多いと思う。




