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月夜よし 夜よしと人に つげやらば
よみびとしらず
月夜よし 夜よしと人に つげやらば こてふににたり 待たずしもあらず
(巻第十四恋歌四692)
月が美しく、素晴らしい夜ですなどと、あの人に伝えるのなら、まるでおいでくださいと願うようなことに ただ、おいでになるのを待たないということでもなく。
女性の立場で詠んだ歌。
名月の素晴らしい夜を一緒に過ごしたい。
待っていないわけではない。
ただ、女から誘いをかけるのは、少々恥ずかしい。
万が一誘っても来てくれなかったら、もっと恥ずかしい思いになる。
名月を見ながら、繊細な思いを詠んだ歌。
 




