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住の江の 岸による浪 よるさへや
藤原敏行
住の江の 岸による浪 よるさへや 夢のかよひぢ 人目よぐらむ
(巻第十二恋歌二559)
※住の江:摂津国住吉(現在の大阪府大阪市住吉区)の海岸
※夢のかよひぢ:夢の中で女性の家に通う道。
住の江の岸に寄せる波ののように私の恋は募っておりますのに、貴方という人は、夜でさえ、それも夢の中で通う道でさえ、どうして人目を避けるばかりで、私の前に出てきてくれないのですか。
実らぬ恋であって、全てが作者藤原敏行の中で完結している話。
相手の女性としては、藤原敏行から「あなたは夢にも出てきてくれない」と言われたとしても、「そんなことを言われても」となるばかり。




