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夕暮れは 雲のはたてに 物ぞ思ふ
よみびとしらず
夕暮れは 雲のはたてに 物ぞ思ふ 天つ空なる 人を恋ふとて
(巻第十一恋歌一484)
※はたて:果て
夕暮れになると、雲の果てを見ては物思いに沈みます。
はるかかなたの空にいる、あの人が恋しくなってしまうのです。
夕暮れの空を見上げながら、雲の果てにいる、とても近づけないところにいる恋人を思い、沈み込んでしまう。
身分違いなのか、遠距離恋愛なのか、すでに自分より優秀な恋敵に取られてしまったのか。
それでも諦めきれなくて、美しい夕焼けを見ても、沈み込むだけになる。