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まてといふに ちらでしとまる 物ならば
よみびとしらず
まてといふに ちらでしとまる 物ならば なにを桜に 思ひなやまし
(巻第二春歌下78)
「散るのを待て」と言って、本当に散らないで留まってくれるものなら、どうしてこれほど桜の花に思い悩むことがありましょうか。
のこりなく ちるぞめでたき 桜花 ありて世の中 はてのうければ
(巻第二春歌下71)
桜の花はすっかり散ってしまうから素晴らしいのです。この世の中にあり続ければ、ついには嫌われるものになってしまうのですから。
二首とも桜の花が、あっさりと散ってしまうことを詠む。
自然の摂理であるので、寂しいけれど、受け入れる、そうするしかないと、無理やり自分を納得させている。




