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我がために くる秋にしも あらなくに
よみびとしらず
我がために くる秋にしも あらなくに 虫の音聞けば まづぞ悲しき
(巻第四秋歌上186)
私のためだけに来る秋では決してないのに、虫の鳴き声を聞くと、すぐに悲しくなってしまうのです。
虫の音を聞くと、すぐに悲しくなってしまう。
自分だけに秋が訪れるわけではないけれど、もしかして、今の恋に不安がある。
だから虫の鳴き声から「秋」を感じると、「相手から飽きられた」と、不安を感じてしまい、ついには失恋が「ほぼ確定」と悲しみ、ふさぎ込む。
そう考えると、単なる自然からの思いだけではなく、なかなか複雑な意味を込めた歌になる。