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おほかたの 秋くるからに 我が身こそ
よみびとしらず
おほかたの 秋くるからに 我が身こそ かなしきものと 思ひ知りぬれ
(巻第第四秋歌上 185)
世間の人誰にでも、秋は来るのですが、どうしても自分だけが悲しいと思ってしまうのです。
この読み手は、秋に対して衰えや、負の思いを持つ。
白楽天の「秋来りて転この身の衰えを覚ゆ」の影響を指摘する学者もある。
おそらく老境に入った人の歌かもしれない。
あるいは、少し前に、恋人と別れた人の歌かもしれない。
次の相手も見つからず、これから秋の紅葉も一人で見なければならない。
あるいは、美しいものを見る気力もないかもしれない。
そして、夜は寒くて寂しい独り寝、それもいつまで続くかわからない。
様々に解釈ができる歌で、「我が身こそ」が、実に効果的。
本当に寂しく辛い時は、他人のことなど、どうでもいいのだから。