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君ならで 誰にか見せむ 梅の花
梅の花をおりて人におくりける
紀友則
君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をもかをも しる人ぞしる
(巻第一春歌上38)
梅の花を折り取って贈った時に詠み添えた歌
あなた以外の、いったい誰に見せることがありましょうか。
この梅の花の、色と香りの素晴らしさは、わかる人だけがわかるのですから。
よほど懇意な関係の人(おそらく女性)に贈ったのだと思う。
実際には、それほど他の梅の花と差があるわけでもないことは、紀友則も贈られた人も、わかっているはず。
しかし、折ったのは、一緒に逢瀬をした屋敷の梅の花だったのかもしれない。
そして、「しる人ぞしる」で、「あなただけがわかる」と、相手に感付かせる。
そう読むと、なかなか艶やかな歌に思えてくる。




