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木の間より もりくる月の 影見れば
よみびとしらず
木の間より もりくる月の 影見れば 心づくしの 秋はきにけり
(巻第四 秋歌上184)
※影:月の光。
木々の間から漏れてくる月の光を見ると、物思いに沈むばかりの秋が来たと思うのです。
男に捨てられる寸前の女の歌とも、とれる。
木々(多くの女性)から漏れてくる(噂が伝わってくる)ので、物思いに沈むしかない(つまり自分は、飽きられた)、そんな時期が来てしまった。
尚、源氏物語須磨では、「須磨には、いとど心づくしの秋風に」と引用されている。須磨に自主退去して、先の望みがない光源氏と、その従者たちに、物思いに沈ませるだけの、冷たい秋風が吹いているという設定。
光源氏一行のみじめな哀感を、さらに際立たせている。