185/289
をちこちの たづきもしらぬ 山なかに
よみびとしらず
をちこちの たづきもしらぬ 山なかに おぼつかなくも よぶこどりかな
(巻第一春歌上29)
※たづき:手がかり
※よぶこどり:「よぶ」は掛詞。カッコウ説、万葉集では主に春の鳥、鶯やほととぎすの例がある。
あちらか、こちらか、方向もわからない、手がかりもない深い山の中で、実にあてにならなく、(あちこちで鳴く)呼子鳥なのです。
山中で道に迷ったから、案内の頼りにしたくて「呼子鳥」なのだろうか。
しかし、その呼子鳥は、春なので木々のあちこちで鳴いている。
そのため、ますます道がわからなくなる。
おそらく、春が来て、小鳥が山のあちこちで元気に鳴いている、それを詠みたかったのかもしれない。




