14/289
雲もなく なぎたる朝の 我なれや
紀友則
雲もなく なぎたる朝の 我なれや いとはれてのみ 世をばへぬらむ
(巻第十五恋歌五753)
雲一つもなく、ただ平凡で魅力のない朝のような私が悪いのだろうか。
結局は厭われて相手にもされずに、長年何もない夜を過ごしているけれど。
いとはれて は、「いと晴れて」と「厭はれて」の両方の意味。
「世」は「夜」と「男女の仲」の両方の意味。
思う人に相手にもされない男の自嘲そのもの。
独身貴族などの自負などは、何もない。
特に「雲もなく なぎたる朝の 我なれや」に、空虚感がよくわかる。
※紀友則:生没年未詳。紀貫之の従兄。古今集に四十七首収録。勅撰入集は総計七十首。小倉百人一首に歌を採られている。