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あひ見ずば 恋しきことも なからまし
よみびとしらず
あひ見ずば 恋しきことも なからまし 音にぞ人を 聞くべかりける
(巻第十四恋歌四678)
逢うこともなく、関係を持つこともなかったなら、これほど恋しくて苦しむことなどなかったと思うのです、
やはり、あの人のことは噂に聞くだけで、留めておくべきだったのです。
憧れの人に逢って関係を持ったばかりに、逢えない時間の寂しさや不安が辛くてしかたがない、こんなことなら噂を聞いているだけでよかったと悔やむ。
しかし、そうは言っても、一度火がついてしまえば、簡単には諦められない。
そんな思いを詠う。




