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人はいさ 我はなき名の 惜しければ
在原元方
人はいさ 我はなき名の 惜しければ 昔も今も 知らずと言はむ
(巻第十三恋歌三630)
※なき名の惜しければ:根も葉もないい噂を流されたくないので
あの人はどうあれ、私は根も葉もないい噂を流されたくないので、過去にも今も全く知りませんと、言おうと思います。
「後撰集」恋二に、貞元親王の歌への返歌として、「おほつぶね(元方の妹)」が詠んだ歌として再録されている。
尚、貞元親王の歌は、
おほかたは なぞや我が名の 惜しからむ 昔のつまと 人に語らむ
(だいたいのところ、失恋となった自分の不名誉など気にしない、あれは別れた女だ、と人に言ってやる)
それに対して、「おほつぶね(元方の妹)」が、「変な噂を立てないでください、あなたなんて知りません」と言い返し、実際は、それを兄の元方が歌にしたのだろう。




