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BLAST!!  作者: OZMN
4/8

発生


入学早々のあの事件がきっかけで、ウェインは、学校生活で、よく嫌がらせを受けるようになった。


バスター女が直々に来ることもあれば、取り巻きの男連中に囲まれてボコられることもあった。


リズは、自分は平気だと言ってはいたが、きっと、同じような、もしくはもっと悪質な嫌がらせを受けてるんだろう。


ウェインには、自分に降りかかる火の粉より、リズを巻き添えにしてしまった事が悔やまれて仕方がなかった。


だが、そのようなことすらも、何気ない日常の一部であったと、後々思うことになるとは、ウェインにも予想できなかった。





その日もダリーなとか思っていた昼下がりのことだった。


出たくもない授業の支度をするために、自分のロッカーに向かう。


「おい、良い朝だよな」


肩を掴んで突っかかってきたのは、言うまでもなくあのバスター女の取り巻きで


「お前さえ、いなければ」


頭の後ろを掴まれて、両脇を固められる。


ウェインには慣れた事だったが、この日はいつもより気が立っていた。


「それはこっちのセリフだっての。

毎朝毎朝、わざわざ会いに来てくれやがって。俺はあんたらの恋人じゃねーんだが」


軽口を叩いて挑発する。


腹いせに、勢いよく投げ出されて、廊下に突っ伏した。


その拍子にカバンを奪われて、中身をひっくりかえされる。


周囲が好奇の目で見て来る。


笑い声が上がって、ひそひそ遠ざかる者と、集まってくる者と。


だが、ウェインはいい加減我慢ならなかった。


いい加減、というか、いつも我慢はしていなかったが。


「…ざけんな」


起き上がりざまに、主犯格の奴にタックルを決める。


そのまま壁際に追いつめたが、両脇にいた他の奴に、引き離される。


両腕を掴まれては、抵抗もできなかった。


即座に、正面から顔を殴りつけられる。


廊下の真ん中で始まったリンチに、少なからず引いている者は居るようだったが、あのバスター女のいる手前、口出しできないようだった。


気付いたリズが、人込みをかき分けてこちらにやってくる。


「やめて!どうしてこんなこと!やめてください!」


だが、そんなリズを止めたのは、他でもなくあのバスター女だった。


彼女はリズの傍まで来ると、容赦なく張り手をかます。


「きゃあっ!」


まともに受けたリズは、その場に転んで倒れた。


「リズ!」


ウェインの正面に立った彼女は、茶化すように唇に人差し指を当てて


「いい加減にしたら?いつまでも頑張ってても、良いことなんかないのよ?」


たび重なる嫌がらせに、ウェインは我慢の限界だった。


「…回りくどい言い方してんじゃねェ…!

テメーはなにがしてーんだよ!」


彼女は優位そうに笑うと、さも簡単そうに言った。


「だから、前にも言ったじゃない。

私に謝りなさい。

”ファントム”からあんたたち市民を、命を懸けて守る私に、無礼な言い方したこと。

国の英雄である私を悪者扱いしたこと。

…そうねぇ、土下座くらいしてくれないと、気が済まないわ。

謝ってくれれば、これ以上、あんたの学校生活に手出しはしない。

…分かった?それとも、もっと簡単な言葉で言った方がいいかしら?」


…この女はなにを言っているのだろう。


初めに喧嘩をふっ掛けてきたのは彼女だし、言い方の認識の違いで、ここまで悪質に突き纏ってくるなんて、どうかしている。


だが、これ以上、リズを巻き込めない。


そのためなら、自分の安っぽいプライドなど、切って捨ててしまった方がいいのかもしれない。


本心では、罵声を浴びせ掛けたいのを堪え、ウェインは歯を食いしばった。


その時だった。


災害時用のサイレンが、校内に響き渡った。


一瞬、誰もが、防災訓練か誤報なのだろうと思った。


だが、次の瞬間、その思いは払拭された。



〔緊急警報。

校内にいる職員、学生たちは、ただちに、近くの防災シェルターに避難してください。

繰り返します。

校内にいる職員、学生たちは、ただちに、近くの防災シェルターに避難してください。

これは、訓練ではありません。

繰り返します。〕



この内容に、誰もが凍りついた。


緊急の内容が、事故や火災なら、その場所や原因が、警報に伴って放送されるはずである。


それがない、と言うことは、あることを確定付けていた。


…”ファントム”の発生。


校内の各地には、”ファントム”の襲撃から身を守るための防災シェルターが、いくつか設置されている。


体育館や校庭への集合をすっ飛ばして、その段階の指示があると言うことは…。


「うわあああああ!!」


「”ファントム”だあああああ!!」


その場にいたほとんどの人間が、悲鳴を上げて、我先にと逃げ出した


「落ち着きなさい!取り乱さないで!!」


彼女は懸命に、彼らの正気を取り戻そうとしていたが、上手くいかなかった。


絶叫と悲鳴。


それに混じって、助けを求める声。


「ぐわあああああああ!!だれかっ!!だれかぁあああ!!!!」


教室の方からだった。


壁が壊れるのとほぼ同時に、血だらけの死体が次々飛んでくる。


腕や、足、体の半分が、まるで、食いちぎられたかのように、なくなっていた。


「いやあああああっ!!」


返り血を浴びた女学生が、叫びながら走って行く。


人に揉まれながら、ウェインは、リズの元へ駆け寄った。


手を差し伸べ、背中を支えるように起して、壁が壊れた先を見る。


「あれが…”ファントム”…?」


破壊された教室には、まだ人が残っていた。


”ファントム”は、クラゲのような形をしていたが、その特性は全く異なるようだった。


教室の天井ほど体躯は、蜘蛛のようにするりと教室内を移動し、今しがた教室から逃げだそうとした生徒を、触手で掴んだ。


「うわあああああ!たすけてくれえええ!!」


掴まれた男子生徒は、そのまま、両足を両側から引っ張られ、体の真ん中から引き裂かれる。


リズが悲鳴を上げて目をそらした。


ぎょろりと赤く光る一つ目がこちらを捕らえる。


蛇に睨まれた蛙のように、身動きが取れなくなった。


ダメかと思った。


縮こまるリズの肩を抱き締める。


だが、二人を庇うように前に出たのは、憎いあの人だった。


「こっちよ!」


言い放った声、の直後の爆音。


彼女の手には、巨大な大砲のような武器が握られていて、その砲口は”ファントム”に向けられていた。


「行きなさい」


”ファントム”の注意が、ウェインから、彼女の方に移る。


「逃げて!早く!!」


正気を取り戻して、ウェインはリズの腕を引いて、誰もいなくなった廊下を走り出す。


彼女は、初めて対峙した敵に、それでも優位そうに笑った。


「はじめまして、怪物さん。ダンスは好きかしら?」


 

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