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BLAST!!  作者: OZMN
2/8

バスター


新入生の一人、ウェインは、凄絶に帰りたかった。


新入生同士の輪を深めるために開かれた、打ち上げ会の席は、一段と嫌な空気に包まれていた。


理由は明確だ。


先ほどから、一人の女学生が、大声で触れまわっているのだ。


自分は”バスター”の一人だと。


国に選ばれた貴重な人材だから、丁重に扱えだの、気に入らないことがあればただじゃおかないだの、もしもの事があれば守ってやるだの。


しかし、それを聞いて、あまり驚く者はいなかった。


”バスター”になれる人間が珍しくないわけではない。


「なにが”バスター”だよ、偉そうに。

肝心の”ファントム”なんか、ここ10年くらい出てないじゃねーか。」


そう。


何が原因かは分からないが、当時はあれほど猛威をふるっていた”ファントム”は、ここ最近発生していなかった。


それでも”ファントム”の存在をウェインが信じているのは、幼いころに一度だけみたことがあるからだ。


空を覆い尽くす雲に、巨大な蜘蛛のような影が映っていて、街並を破壊していた。


やってきた若い男の”バスター”に倒されたようだったが、ウェインがみた”ファントム”はそれが最初で最後だった。


つまりは、あの女の”バスター”も実戦で戦った事はないはずだ。


それなのに、あれほど自信満々に触れまわれる理由が謎だった。


「おい、あんた」


お供を連れて、ふてぶてしく煙草を吸っていた彼女に、言ってやる。


「あんま、調子に乗んない方がいいぞ」


それが、喧嘩言葉と勘違いしたのか、


「御忠告どうもありがとう。でも私、それに見合う能力をもってるから。

なんなら、試してあげてもいいけど?」


煙草をもみ消して、拳を鳴らしながら、こっちに向かってくる。


周囲の奴らは、あいつ”バスター”の奴に喧嘩売ったぞ、なんてまくしたてていた。


「構えないの?」


やる気満々の彼女に対して、ウェインはどう返そうか迷った。


「俺は、そういうつもりで言ったんじゃない。

デカイ顔して油断してると、いつか足をすくわれるって、忠告したかっただけだ」


「何よ。今更怖気づいたの?」


「そうじゃなくて、女を殴るつもりなんかねーよ、最初から」


だが、彼女は、聞く耳を持たなかった。


好戦的に笑って、構えた拳で、ウェインの顔を殴った。


「てめ…」


よろけたとこに、飛んできたサマーソルトがクリーンヒットする。


踏みとどまれなくて、床に突っ伏した。


歓声とブーイングが同時に起こる。


両手を広げて、気持ちよく会釈している彼女に、拍手さえわき上がった。


「ダッセ」


「女に負けてんじゃねーよ」


なじった声が、倒れたウェインの上に、飲みかけのジュースや水をふっ掛けて来る。


「どいて、どいてください。ウェイン、大丈夫?」


やってきたリズが、脇にいた野次馬どもをのけて、ウェインの方へ来た。


「大変、血がでてる…」


ハンカチを取り出して、すりむいた頬にあてがう。


そんなリズが気に入らなかったのか、優位に浸っていた彼女が


「そこのあなた」


リズを指して、高らかに言い放った。


「優しいつもりなのかもしれないけど、まず、私に挑んできたのは彼よ?

この国の安全を守る、”バスター”の私を、悪者扱いしたいのかしら?」


「そんな、私はただ…」


「おい、文句があるなら、俺だけに言えばいいだろ」


リズを責められるのが癪で、前に出て言い放つ。


それが面白くないらしかった。


「ほら、またその態度。私をバカにしてるわ。

私に謝りなさいよ。楽しい学校生活を送りたいんでしょう?」


我慢ならなくて、ウェインはとうとう言ってやる。


「クソ食らえ」


それから、リズの腕を引いて、彼女の前から立ち去った。


 

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