瞳を閉じれば浮かんで来る。そう、ゴブリン。
ゆっくりと瞳をあける。
真っ先に目に飛び込んで来たのは、おどろおどろしい灯篭のようなものだった。
青白い炎が時折、火の粉を散らしながらゆらめいている。
視線を左右に這わせ、最終的に地面に手をつけ感触を確かめる。
触れた地面はジメジメしていて肌触りが最悪だった。
とりあえず立ち上がり、周りを見渡す。
朧げに薄暗いどこかの洞窟かと、当たりをつける。
『ピコンッ』
突如頭の中に音が響く。
それと同時に視界にホログラムのようなウィンドウが浮かび上がる。
要約すると、このような情報だった。
貴方は異世界に転送されました。
頑張って生きてください。
なんとも、行き当たりばったりで適当な文章だった。
起きたばかりだからか、それとも記憶が欠落しているのか、何も思い出せない。
はぁ
ため息を零し、気乗りしないが探索を開始した。
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しばらく探索をして、わかったことがある。
まず、ここは恐らくダンジョンと呼ばれるところだろうということだ。
知らない場所を通ると、ホログラムがその場所の名前を表示するのだ。
その際、腐敗の洞窟ダンジョンの◯◯と表示するのだ。
そして探索を始め、10分程経った頃だろうか。
緑色のひどくすえた匂いのする化け物を見つけたのだ。
ダンジョンや、異世界もので定番のゴブリンだ。
もう、ここはダンジョンだと断定して良いだろう。
今いる場所がわかっただけでも、十分だ。
とりあえず、次の問題は友好的かわからない上に言葉も通じるとも思えないゴブリンだ。
息を殺し遠くから観察する。
どうやら、何やら人型のものを食しているらしい。
食しているのものが人間かどうかはわからないが十中八九近づくのはアウトだろう。
ダンジョンとしか、わかっていないところの生命体に不用心に近づけるほど俺は勇者ではない。
ここは逃げの一手だ。
ぐ、グル?
おや、やばいな。
鼻が効くのか。
俺は冷や汗を大量にかきながら音を立てぬよう、全力で逃げ出した。