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底辺なろう作家の足掻き

作者: 簪紅有

 小説家になろう、というサイトをご存知だろうか。僕はそこで小説を投稿している。


 もちろん僕はランキング上位を走るぶっ飛んでるヤツらとは違ってランキングに一度も載ったことがない底辺作家だ。いや、過去に一度だけ不正でランキングに載ったことがある。じゃあ今からそれをやった経緯、そしてそれからを話そうか。


 まず僕は、一年ちょっと前になろうに登録した。あの頃はまだ夢を持っていたなあ、ランキングに載って、感想もそこそこ来て、なんて。ただその夢は投稿し始めてからどんどん崩れていったんだ。


 僕は文章を書くことに関しては全くの初心者だったからね、まずはいっぱい文字を書いたんだ。それはもういっぱい。正直なところ、その時は僕が一番文字をこの期間で書いてるんじゃないかと思ったりもした。


 それが大きな間違いだったと知ったのは投稿し始めてからだった。僕は毎日三千字くらい書いてたのかな?とにかく勢いとその他諸々で書いてたんだ。それでストックも溜まってきたし初めて投稿することにしたんだ。


 小説を投稿する第一歩、それはもう緊張したね。本当に。まあとにかく僕は投稿したんだ。


 一分、二分、十分、一時間とマイページと投稿した小説のページをずっと行き来して、アクセス数、感想、お気に入り、評価をずっと見続けた。


 アクセス数が一増えると嬉しかった。でも、その日、感想もお気に入りも評価も、何も付かなかったんだ。


 流石に初日だしまだみんなが見ていないからこうなんだ、と思ったよそりゃあ。だから僕は次の話を投稿したんだ。


 それでも評価は、感想は付かなかった。僕は自分の小説がそこそこ面白いと思っていたから、ムキになって溜め込んできた文章を毎日二つずつ投稿するようにしたんだ。


 すると、どうだろう。それをやり始めてしばらくしないうちに、初めての感想が付いたんだ。その時は感想をよく見もせずに狂喜乱舞したね。


 それで、感想に何が書いてあるのか、見ることにしたんだ。そこにはなんて書いてあったと思う?そこにはね、良い点で『毎日投稿していること』と書いてあって、悪い点で『何がやりたいのかがわからない。文字がもっさりしていて読みにくい。もっと簡潔に書くように。主人公が作者様のあやつり人形みたいに思える』と書いてあったんだ。


 信じられるか?僕はあんなに頑張って書いたのに、良い点が毎日投稿していることだけなんだぞ?そんなことって、とその時は思ったね。ボロクソに言われたことへの怒りよりも、自分の文章が下手なんだと思い知らされたショックが大きかったね。


 追い打ちをかけるように、その感想を書いた人が評価を付けていて、それがストーリー評価が一点で、文章評価も一点だったんだ。


 ショックを受けたまま、僕が書いた作品を読んでみたんだ。酷かった。それはもうこれまで読んだ小説の中で最底辺に位置するくらいに酷かった。


 一部の無駄な部分を削ってみると、なんと千五百字以下だったんだ。半分も無駄な部分があったら、そりゃあもっさりしてて読みにくいよな。


 僕はなんとかしてマシになった文章を投稿するようになった。ただ、正直その頃にはランキングに載ることなんて絶対に無理だと思っていたから、僕はただひたすらに夢も何もなく書いてるだけだった。


 それでもやっぱりランキングに載りたいという気持ちはあったんだ。だから僕は不正行為をしてしまったんだと思う。


 ある時、僕はある名案を思いついたんだ。今となっては最悪の案だったと思うけどね。


 その案っていうのが、自分で自分にポイントを入れるということだった。


 すごい案だと思った僕は、早速作業に取り掛かることにしたんだ。まず僕はメールのアカウントを大量に作った。そしてすべてのアカウントをなろうに登録したんだ。それを一ヶ月くらい寝かせた。


 寝かせている間も僕は小説を投稿し続けた。自分で自分にポイントを入れずにランキングに載れた方が当たり前だけどいいからね。


 それでも一ヶ月ずっと投稿し続けた小説は、全くポイントを取ることができなかった。


 結局僕は寝かせていたアカウントを使ってポイントを稼ぐことにした。まず、僕はランキング上位の中でもさらに上位の人達の作品にポイントをつけることにした。すべてポイント最大、お気に入りも登録した。


 そして満を持して自分の作品に評価を付けてお気に入りも登録した。もちろんポイントは最大にしてね。


 それで僕はランキングに載れたんだ。嬉しかった。ああ嬉しかったよ。ランキングなんて夢のまた夢だったからね。でも、嬉しいとともになんだか虚しくもあったんだ。自分で自分に評価を入れて得たポイントになんの意味があるのかって。


 日に日にランキングは下がっていくし、感想には『つまらなかった。なんでこんな作品がランキングにあるのかがわからない』なんて書かれる。なぜランキングに載っているか?そんなの、僕が自演したからに決まってるだろう。その頃にはもう既に自演を疑う声がちらほらと挙がってきた。


 とにかく、どう考えても僕の作品がランキングに載るのはおかしなことだったらしい。気が付くと作品を消されていた。警告も何もあったもんじゃない。いや、きていた警告をただ気付かぬふりを、見て見ぬふりをしていただけなのだろう。


 作品を消された僕は、自分のやったことの重大さに気が付いた。なんて馬鹿なことをしてしまったんだって。


 それでも僕は新しい作品を投稿し続けた。自演したから消されたということが知られたのか、ポイントはほとんど付かなかった。いや、ただ単に僕の文章がつまらなかっただけかもしれない。


 毎日、毎日僕は投稿した。必死になって書き続けた。不正行為をしたことへの僕なりの贖罪だったんだと思う。


 認められなくたっていい。ランキングなんて関係ない。ただ、僕は足掻き続けるだけなんだ。だから今でも僕は投稿している。


 ここまで僕の話をしたけれど、君はどうしたいんだい?それでも君はランキングに載るために投稿するのかい?文才がなくても、つまらないと言われても、投稿するのかい?


 これは底辺のまた底辺、最底辺に位置する僕からのアドバイスだよ。足掻くんだ。どんなにスタートが悪くても、どんなに酷評されても。不正でランキング取ることよりも、足掻いて、足掻き続けた方がよっぽどいい。

まあ、自分が満足できるものを書き続けるのが一番ですよね

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