敵襲
タイトルを一回変えようかと思います。
夜の星が輝きだした時間。
砦の中庭は劇の盛り上がりによりかつてない人数が集まり、その演劇を楽しんでいた。
だが、彼らは今が戦争中であると言うことを忘れていた。
敵というのは都合の悪い時に来るものであり、その楽しみを邪魔するものなのだから。
「ぐっ!」
わき腹に灼熱の痛みが襲い掛かる。
今のスコットは演劇用の鎧、派手な装飾を特徴とするその鎧だと魔法のかかったボウガンの矢を防ぐことが出来なかった。
「ちっ!」
腕に入れ墨のあるフードの男は舌打ちをする。
それは目標を殺せなかったことと標準がズレたこと。
引き金を引く直前、運が悪いことに観客に背中を押されたのだ。
誰かは分からない。が、人の集まるところでありふらついた誰かが偶然彼の背中を押した。
本当に運が悪かったのだ。ただそれだけの理由でこの襲撃は失敗に終わる。
「あそこです!」
白い和服を着たイナバが叫ぶ。
耳が良いイナバは即座に襲撃者を見つける。
即座に逃げるのは襲撃者の男で、失敗した時点で背を向けて走っていた。
「うお?!」
「……」
驚く兵士たちはちらつかせた刃物を見て即座に道を開ける。
そして、壁に鎖をかけて登る襲撃者は正しく暗殺者だ。
「スコット、スコット!」
即座に駆け寄るメルは血の気が失せた顔のまま、青い顔のスコットに治療をする。
それが功を奏したのか意識を回復させるスコット。
「だ、大丈夫ですか?メル様……」
「わ、私は大丈夫です!ですが――」
「ならば、指揮を……取ってください……」
スコットは最後にイナバとメルに視線を向け意識を失う。
それはメルとイナバを信じたからこその瞳であった。意識を失ったスコットであったがこれからの展開を予想していた。そもそも敵の狙いは砦の奪還でありその準備として襲撃をしたのだ。
つまりは混乱が目的、主軍は――
「哨戒の者です!伝達、敵の攻撃部隊接近中!数は五百です!」
医務室に運ばれるスコットを見ながら、取りあえずの安心と冷静を取り戻すメル。
だが、兵士たちは混乱をしていた。
「て、敵襲?!」
「武器を持て!」
「どこからだ?!敵は何人だ!」
それは彼らが戦争に対して無知な証であり、想定していなかったから。
混沌へと落ちようとした彼らを救ったのは――
「ギャオオオオオ!」
「「「!」」」
突然の咆哮に彼の動きと視線は竜に向く。
そしてその竜の足元で堂々と立つ少女を見る。
「指揮官は私、メルがします!部隊ごとの集合を初めに!それから部隊長は私の元へ来てください!」
気丈に堂々と振る舞うメルであるがその手足は、隣に立つイナバには見えていた。
強襲に対応したように見えるメルであるが、それはベガの言葉があったからこその行動で、今にも恐怖や不安が手と足を震わせる。
“良いかメル。指揮官の最初の仕事は指揮系統の確認と堂々と振る舞うことじゃ”
一昨日、寝る前に教えられたことであったが今のメルはその風景とベガをはっきりと思い出していた。
そして――
「全部隊、そろいました」
そうこうしているうちにメルの前に部隊長が集まる。
思考に耽るのは一瞬であり、余りの時の早さに驚くメルだったがそれでも表情を崩さずどっしりと構える。
ゴクリと小さくつばを飲み込むメル。
「まず初めに情報伝達!」
「は、はい。敵兵の数はざっと五百!騎兵に関して、百は下らないかと……なのでもう間もなく交戦状態になると考えられます!」
直立する伝令の兵士は緊張しながらも立つ。
対して、肩の力を抜き一先ずの安心を得るメル。
「であるのならば、部隊の編成をさせてもらいます」
「で、ですが敵はもう間もなくこちらに来るとの情報が――」
「敵騎兵隊に攻城能力はない。攻城するのであれば、歩兵と足並みを揃えるのが定石です。そしてそのことから考えるに敵の狙いはこちらの混乱が目的……。予想できるに敵増援の可能性は低く、五百で強襲するほど、これが急な作戦だったと考えられます」
「「「……」」」
部隊長は無言でメルの言葉を確認しアイコンタクトでその考えが合っていることを知らせる。
現に敵の動きは騎兵隊をチラつかせるだけにとどまり、攻めてくる気配はない。
通常、攻城戦は攻める側が不利でありその不利を人数で補うのが主流である。だが伝達によれば敵兵の数は五百でありこちらと同数。
「全軍に告げます!武器を持ったものから迎撃の準備!振るうは武器と己が勇気!生きる為に戦い、死ぬことは許しません!私の勇名の元に剣を振る覚悟を授けます!」
「「「おおおーーーーーーー!!」」」
剣を掲げる兵士たちに恐怖の色はない。それは正しく死の恐怖を克服したから。
その様子を見ていたイナバは一つの事実に気付くのだった。
実験的なものなので元に戻すかも……




