荒れ野で
〈ジャンヌ〉の待ち伏せによって少しの遅れが出たものの。
王国連合軍は順調にベガの待つギルス遺跡に向かっていた。
野宿をしながら……途中、魔物に襲われながらも。
彼らは確かに歩を進め。
「……ち!」
マクスマークの複雑な状況があらわになっていた。
今は兵士たちの休息を含めた時間で。
そんな休息の時間であるにも関わらず、その苛立ちは貧乏ゆすりと睨みつけるような演奏家を見る様子で理解できた。
「マクスマーク様……次の戦いではどのようにするべきでしょうか?」
「……王国軍の言葉に従うべきだ」
「しかし……」
忠言する執事に対して。
マクスマークはうんざりしながらも手をパンパンと叩いた。
その音を皮切りに演奏家たちの愉快な音楽は消え。
一礼してから天幕から出ていくのであった。
「このまま主導権を握られ続けるのは良くないことだと理解している。しているが、解決できるかは別問題だ」
「……」
「現状、ベガの戦力に関しては特段問題視していない。囚人たちを使えば容易く殺すことが出来るだろうが、その時に余力があるのかどうかだ」
「余力……でございますか?」
執事は余力という言葉を覚えながらマクスマークの言葉を聞いた。
余力……言い換えれば戦力と評する言葉だけど。
「王国はいざとなれば力でこの国を支配するつもりだ。今はまだ国としての価値がありそのような手を打たないが」
帝国に渡るのであればと。
略奪などの妨害で国を台無しにするであろう。
それくらいの事を彼らならばする。
故に。
「この戦いでどうやって勝つのが重要になる」
断言したマクスマークは激しく燃えた松明に照らされながら。
勝ち方を模索していた。
いや、この場合の勝ち方など決まっていて。
「……当初の予定通り、王国に対してどのように妨害するのかですね」
「ベガと王国の相打ちで幕を閉じたい。その為には「その為には?」!!」
バッと彼らは天窓の入り口に注視した。
それはこの時間に聞こえるはずもない声。
そして、この場所にいるはずもない声だからだ。
ゆっくりと……その声の主は光に照らされ。
「ウタカタの……妄想はすみましたか?」
「き、貴様!」
包帯を巻いた男〈大放火犯〉と呼ばれる彼がそこにいた。
にやけ面と全身にまかれた包帯が。
天幕にある松明が照らした。
執事は懐から短刀を取り出して応戦する。
もしもに備えた武装は主が逃げるまでの時間稼ぎを想定していたようだ。
ただそれでも相手はあの〈大放火犯〉だったから。
「ご! はぁ!?」
一瞬で……炎が執事の腹を貫き。
彼の抵抗は数瞬で終わったことを告げた。
唖然とするマクスマークはすぐさま、首についている首輪で殺そうとするも。
「アラアラと……それは既に焼いたよ」
包帯を巻いた〈大放火犯〉はケタリと笑い。
黒く焦げた首輪を見せる。
それが唯一囚人たちを制御することが出来るもので。
マクスマークの希望だ。
その望みが断たれマクスマークの足は後ろに向かう。
「……目的は何だ?」
「冷静を装うか? ケナゲダと……言えばいいかい?」
「お前は……これ以上罪を重ねるつもりか? 私の命を奪っても無意味だ」
「……」
距離を取りながら。
マクスマークは相手を説得させるように言葉を選んだ。
それは無意味という言葉や罪という言葉を使い。
「私を生かしておけば……貴様の罪を消すことだってできる」
冷や汗を隠しながら。
マクスマークは己の持つ最大のカードを切った。
彼の権力を……またはこのベガ討伐に成功すればこのような約束など簡単になせる。
成せるも。
「罪を消す? ケタケタと面白い。私は罪を犯すことを目的としているのに……」
「な、何?」
「今さら己の犯したことに後悔すると? アラアラと……呆れる」
その言葉を残すと同時に〈大放火犯〉の姿は消えた。
それはマクスマークが見失ったと言う意味で。
この場に彼はいるのは間違いなく。
「が! ま、まて……フ、フラマ―!」
「例外なく……燃やせ」
首を掴んで持ち上げた〈大放火犯〉改め、フラマ―は。
マクスマークを焼き殺した。
青い炎が天幕に移り燃え広がる中。
「荒れ野に炎を……」
そう呟いて彼は大きな事件を起こした。




