距離を置いて
投稿が一日間違えました。
明後日にはまた投稿したいと思います。
メルは密かにミラル奴隷国に入国するのは。
正しくリニエスタ王国の名を変え、新たな国を作るからだ。
それは帝国や王国からしたら面白い話ではなく。何としても阻止するべき案件である。
なので、メルはスレインやレオジーナと言った普段共としている彼らをあえて置いていきイナバと城から出ようと計画した。
「深夜帯に城から抜け出し、私の竜を使って飛び立つべきかと」
「妥当なところだね。竜を使えば三日四日でつくことが出来そう?」
「特殊な……目立つ竜を使えばそれくらいか、それ以上の速さで着けますけど……普通の竜を使えばもう少しかかるかもです」
執務室で話すメルとイナバは。
悪巧みをするようにひそひそとは話さず。
メルは書類仕事を片手間に、イナバは書類整理を片手間に行いながら淡々と話した。
両者視線を合わさず己の手元だけを注視し。
「……面目ではベガに狙われているということで私室に籠っているとさせてもらいます」
「立場的にもそれで問題無いかと……、上空を飛ぶので防寒対策だけは忘れないようにしてください」
「了解です」
短く……本当に短く彼女たちは会話を積み重ねて。
「意外と何とかなるかも?」
「問題が発生しなければ目的に着くのは簡単ですよ。後は」
荷物を運ぶ必要もないし大人数でもない。
ある程度の補給は必要であるも竜の力を使えば難なく出来ることだろう。
サッと書類を鳴らして整えたイナバは。
「クリコ様に対してどのような提案が出来るか……ですね」
「……」
一番の懸念としてクリコがこの案に乗ってくれるかと言うことがあった。
現状、メルが新しい国を作ったからと言って何か得をすることも無い。それどころかこちらの弱みに付け込んでくるかもしれない。
加えてクリコが何を望んでいるのかも分からない状態だ。なので、今はイナバに頼るしかなく。視線を若干イナバに向けるも。
「ベガ様と同じで何を考えているのか分からないお方です。私も……ベガ様方とは“距離を置かれている”立場なので口添えは出来ません」
「……分かりました」
一縷の望みすらもイナバは抱かせなかった。
どんどん書類を整理し、自らの仕事をこなす傍ら。
メルはイナバがどのような存在なのか興味を持った。
「……」
距離を置かれている。
この言葉を基にすると多分というか。
イナバはベガたちを特別視していることが取れていた。過去に何があったのか分からないし、こちらから尋ねることも無いだろう。
ただこれらの発言を基にするとベガとイナバの関係は簡単なものではないと言えた。
しばらく妄想に耽ったメルはハタとイナバが書類を持ってきていたことに気付き。
「あ、ありがとうございます」
「……はぁ、あの方々は私たちに“生き方を教えてくれたのです”。私たちには生まれの記憶はありませんが育てられた記憶だけはあります。それが私と……ベガ様をつなぐ絆です」
面白くない話を終えたイナバはジト目でメルに集中して仕事をするように頼んだ。
回答を聞けば無限の妄想もする必要がなく。
具体的な話しでないにしても胸の靄は晴れたと言えるだろう。
集中しだしたメルは数日分の仕事をこなして。
「何にしても……今日の夜には出られそうですね」
そう、イナバに呟かせるのだった。
ベガ討伐に向かった王国連合軍は。
大所帯でありながらも今までスムーズに行進していった。
それは敵襲が無かったことも起因しているが。
何より王国騎士団が主導権を確実に握っているからだ。
傭兵やならず者が数合わせで入れられながらも、彼らは行儀よく人々の希望となった。
そして少し休憩をし。
「さて、私ならここに伏兵を置くのだが?」
「……ギルス遺跡に続く橋はこれしかないのですか?」
「日数がかかればそれだけ人口が流失する。回り道をしている余裕は無い」
「……」
イワンシーとシルが言葉を交わしながら。
今後をどうするべきか迷った。
確実性を取るのであればこのような木製の橋を渡るべきでないし、迂回する方が正しいだろう。ただしそれは人口流失による損害が無ければの話しとなる。
要するにだ。
「今は時間を優先する。とは言え、無策で渡河するわけではない」
「と言うと?」
「ロンジェルと〈深緑の魔女〉を呼べ」
「……承知」
頭を下げたシルは一瞬にしてイワンシーの策を理解する。
この二人が呼ばれたわけは。
土の魔法で橋を。
植物を生えさせて橋を作るからだ。
それによって三か所から川を渡ることができ。
「シル。お前は真っ先に橋を渡り対岸にいる敵を始末するのが任務だ。ぬかるなよ?」
「……承知しております」
簡単な作戦で彼らは行動した。
当初の予定通り元からある木製の橋とロンジェルの土の橋、それから深緑の魔女アザナが作った植物の橋を加えて。
「第一部隊、第二部隊、第三部隊。対岸の安全を確保せよ」
三つの部隊が一気に。
川を渡り始めるのであった。
イワンシーが慎重に期した行動。
この行動に意味はあったのかと言うと――。
「カラララン」
静かに動く〈スケルトン〉が三千体。
意味があったと言えた。
氷系の魔術士や土系統の魔術士は工兵としても役に立つので必須ですね。
攻城戦に関しても役立てるのでかなり強いです。




