王国試験場 黒葬樹の森
アイネのイラストを投稿しました。
プロローグ絶望を望むものとキャラクター紹介を参照してください。
この絵で伝えたいことが少しでも伝われば幸いです。
暗雲と黒さを纏った霧が行く先の暗さを示し。
肌に張り付くような湿った空気が不快感を与える。異臭を察知する嗅覚は危険を匂わせながらも獣と木々の匂いをかがせた。
前方を心もとない発光石のランタンで照らしながらメルは――。
ビルステージから貰った手記によってメルらは“王国試験場”の特徴について知ることが出来た。
その特殊……に関しての記述は手記に示された通りで。
「“王国試験場”は主に三つの区画で出来ていると……一つは“工房”区画で、もう一つは“実験場”……。最後に“極秘研究施設”。周りの木が黒葬樹……屍を取り込む樹で紅い樹液を持つそれに代わると“工房”に近づいた証で……」
白いドレス――模様がある魔法防御力の高い服を着たメルは歩きながら歪に生えるその木を触る。
よく見ればその手記に書いてあったように樹の根が屍……白骨死体に巻き付いているのが窺え。
「し、死相キノコ……いつ見ても不気味です……」
防寒服を着たイナバが嫌な顔をしながら歩く。
人の苦しみが柄となって現れた紫のキノコ。
その横を骨くい虫が蠢き。
「呪層の霧が日光を遮っているね。確かに時間帯が分からなくなるよ」
空を見上げヘラリと笑う……ローブを着ているシフォンは今も立ち込める霧が。
若干の黒さと人の苦悶した表情をしていることを確認しながら呟いた。
この現象は正しくこの土地に含まれる呪詛がとけている証で。
ビルステージから貰ったアイテムが無いと歩くことが困難になっていたのだろう。
「……あちこちに落ちている瓦礫は相当古いもののようですね。何処から飛んできたのでしょう?」
顎に手を当てながら真剣な目で歩むのはマントに身をやつしたヴァリエルで。
整えられた茶髪が揺らした。
「肌寒いですね……日光が届かないからでしょうか?」
「私の魔剣も関係しているかもしれませんが……それでも寒いですね」
灰色の髪を流すクゼンは軽装で俊敏性の高い装備。
対して蒼の甲冑を着るスレインは魔剣の冷気に不快感を示しながらも歩いた。
先頭を歩くのはリングウッドで。
「錆びた鎖と朽ちた塔……間違えないな。近づいているぞ」
地面に落ちている鎖の後と原形をとどめていない門……見張り搭のみが健在するその場所は。
正しく隔離された施設……王国試験場の“工房区画”に違いなかった。
この門を潜ったら最後と言われる不気味な場所であるが。
「ワクワク……しますね」
メルの見解は違っていた。
例え、不吉を思わせる霧があっても。
死体を貪る木々があっても。
メルは彼らとここにこられたことに期待感を抱いていたのだ。
黒葬樹の森を抜け。
複数の朽ちた建物と散乱した家具を見れば。
ここが昔、生活の場として機能していたことが分かる。
窓も割れ壁すら半壊した家を見るに“壊されたのだと”推測して。
「〈融合したキングコボルト〉……」
「? どうかしたのですか? シフォンさん」
「いやなに……ここで警戒するモンスターを口ずさんだだけだよ。他にも〈改造されたコボルト〉も怖いけど……やっぱりアイツが一番怖いかな」
「……」
メルはシフォンの表情を完璧には把握できなかった。
できはしなかったが違和感があったのは何となく理解できた。
歩いていた一行はその話題でピタリと動きを止め。
「ただのコボルト……じゃないのか?」
「キングという言葉が差す通り普通のコボルトよりも大きい。加えて“融合した”……という言葉も付いているんだ。想像は付くだろう? ここで何が起こっていたのか……」
「……」
リングウッドが尋ね。
剣呑な雰囲気のシフォンが答える。周りの者たちもシフォンの言葉を吟味したうえで、ここで起きていたろくでもない実験に思考を巡らせた。
「国が主導で行う実験じゃ。差し詰め魔物に知性を与え、調教しようと考えての実験だったか……? とは言え、我としてはそれを知っているお主に興味があるのじゃが?」
「……言わせるなよ。こう見えてもエルフ種なんだ。そういった事に“関わりがある”だけだよ」
ヘラリと笑ったシフォンはそれだけを告げて。
この話題を終わらせようとした。
ヒンヤリした雰囲気はシフォンの知られざる過去を垣間見たゆえの恐ろしさか。
はたまたこの家々の残骸を見たからなのか定かではない。
しかし。
「必要な時に話して下されば大丈夫ですよ。私にとってシフォンさんはいつまでも家族……ですから」
「……」
メルのこの言葉で雰囲気は良くなる。
メルが良ければそれでよいし、それ以上の追求は無駄だと誰もが理解していた。
兎も角。
一先ずの目標と言うのは。
「ぜ、全体の把握も含めて、調査が必要ですね。私たちは敵対行動を避け様子を見るだけに留めましょう」
提案したイナバの言葉に同意するように全員が頷いた。
腕を組んで頷く者や杖を肩に乗せて同意するもの、扇子で口元を隠すものや気乗りしないながらも仕方なく頷くものなど。
各々チームに別れ散開した。
この場合はメルとクゼン、ヴァリエルが一組のチームとして動き。
情報を集めるのであった。
最近、イラストを頼むようになって自分の文章力の無さに呆れを覚えました。
この章は不気味さと異形で恐怖的な敵が魅力なのですが……。
表現しようにも絵の方が絶対に伝わりやすいと言うのがネックです。
詳しく書こうとするとライトでなくなるので難しいですね。




