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一流のギャンブラー

すいません。

今日から投稿を再開していきたいと思います。

次は21日の23時に投稿する予定です。

 “盗賊の村”改め、“王国試験場”についてメルたちは調査することとなった。

 街道を歩くメルたちはこれまでの情報を精査しながら。

 予想できることについて話を進めた。


「国が進めるほど大きな実験とは何でしょうかね?」

「魔物の実験やら大規模魔法の開発。新しい兵器の威力実験なんかと、上げたらきりがないぜ」

「……」


 メルとリングウッドの話しを聞きながら。

 無言のイナバがその後を続いた。

 俯き思案するイナバはこれからの未来に対して希望的観測が出来ないでいた。

 領主でありながらもイナバは今も何もできない。

 ただそれでも。


「碌な……実験では無いのだと思います」

「「……」」

「人が立ち入れないほど強力な“呪い”をまき散らした結果を見れば。得ようとしていたものが、とてつもなく強大だと言うことが分かります。……人道に反したからこそ、その実験は“失敗”したんだと思います」


 確信に迫ったような。

 それでいて不吉を招くかのような言い方は周りの空気を重くした。

 結局彼らの会話は予想止まりであり。

 身構えても仕方ないことだと言えた。




 煌びやかな建物はレジャー施設の象徴として君臨していた。

 派手な装飾は成金趣味をふんだんに使った結果でもあり。

 一夜の夢を見せる場所――カジノとして機能していた。


「ここにその人がいると……」

「情報が正しければな。後は素直に教えてくれるかどうかだ」

「だ、大丈夫ですかね」


 不安をにじませるイナバと。

 建物を見上げたメル。

 危惧しながらもまあ何とかなると高を括るリングウッドがカジノを見つめた。

 ガラスの扉を潜り。

 中に入った三人は露出度の高い服を着たお姉さん。

 それから厳つい恰好をした男に見守られながらその雰囲気を知る。


「「……」」


 カジノなど初めてであるメルとイナバは。

 余りにも騒がしい音と、眩い光にくらんでいた。

 加えて立ち込める煙草の煙や全てを奪われた哀れな者たちの異臭などで。

 メルたちの嗅覚は勿論。

 感覚に異常をきたした。


「さて……目当ての人物は何処にいるかな?」


 そんな中を平然と歩くリングウッドは。

 一度経験したからなのだろうか。慣れた足でその中を進んでいた。

 カジノにいる刺激的な風景も、たばこの香りも。

 リングウッドには特別なものでなかった。

 そして。


「ほぉ……」


 一段と目を引く勝負を見つけた。

 感嘆の声がリングウッドから零れたのはただ単純に強さを見つけたから。

 圧倒的に残酷に。

 されど品と気高さを宿したそのギャンブラー。

 白髪の初老で気崩したスーツとその腕に付けている古いブレスレッドが目を引く。


「……」

「っ!」

「く、くそ……」

「う……」


 勝負の最中でその初老の男だけが。

 余裕を持って座っていた。ガタイの良い顔に傷のある男もうめき声をあげ。

 眼鏡を掛け長いコートを羽織る中年も表情に焦りを隠せず。

 豪運を持つと言われる商人すら悔しさを滲ませるほど。

 だから。


「無効だ! こんな勝負は無効だ!」


 苛立ちを示して暴力的な手段に出る者も当然いた。

 それは予想できた通り、ガタイの良い傷のある男だった。態度で示す通り一番負け続けている人物。机のチップが少ない彼は。


「有り金をすべて出せ。そうしたら命だけは助けてやる……!」


 暴力に訴えかけることでこのカジノの勝利者になろうとした。

 いきなりの事態と抜いた刃物で場に真剣さが増した。

 慄く観客は勿論、この場をどう切り抜けようか商人とコートを着た中年が苦悩する。

 だが。


「レイズということか?」

「はぁ!?」

「刃を見せたんだ……。命を奪うことは勿論、奪われることも考慮したんだろう? ――だからコールだ」


 しばらく……ブレスレットを見つめていた初老の男はそんな言葉を彼に放った。

 バラまかれた金貨に面を食らったガタイの良い男。

 対して初老の男は視線をその男に向け直し。


「逃げきれず、殺されるか。私たちを殺し有り金をすべて奪うか……。それはそう言う勝負だ」

「っ!」

「チェックか? フォールドか? それともレイズか?」


 抜かれている刃よりも鋭い眼光でガタイの良い男を睨み返した。

 銀に光る刃よりも白い髪と髭が一切怯えないことを示し。

 着崩したスーツにも冷や汗を感じさせない。

 あまりにも肝を据えた彼の態度に場は飲み込まれ。

 冷たい空気を纏った。刃物を持ち、脅迫しているのはガタイの良い男。体格も良く恐怖を覚える彼の形相と態度はどう考えても。


「さあ、どうする?」


 初老の男よりも怖いはずなのだが。

 今のこの場はその男に恐怖していた。

 理解できない怖さと堂々とした佇まい。正しく彼こそがこのカジノの帝王にして。


「お、降りる……」


 武器にも屈しない一流のギャンブラーだった。


ベガのイラストが完成しました。

一話目に掲載します。

皆さんのイメージ通りであれば幸いです。

追記。

メルのシーンは私が選んでも良いのでしょうか?

このまま何も返信が無ければわたしの方で勝手に決めたいと思います。

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