エピローグ 時代の終わり
彼の言葉によって会場はざわめきを起こした。
この言葉は単純に一般生徒たちにも生徒会の危険性を伝え。
「生徒を退学させられる組織か……」
「結局貴族の上に更に力の強いものが来るだけ……。何も変わらないな」
生徒会について反対する意が伝えられていった。
最早この場は会議するには騒がしく。
また混乱も大きい。
もう明日に引き延ばそうかとユリウスは判断しようとしたが。
「うるさいぞ……。ゴミども」
シーンと辺りが静まり返った。
不安を覚える声も。
混乱に思惑が通った喜びも。
全てがかき消される言葉……暴言が場を支配した。
これがもし、ユリウスやリリィから発せられていたのならこのような効果は出なかっただろう。何せこの発言には彼の持つカリスマと日々の傲慢さが乗った言葉であり。
「ユリウス……貴様はどうして生徒会を設立したい?」
「それは……」
「何のために……力を得るつもりだ?」
この場で今まさに裁かれようとしているノストのものだった。
場を支配する彼の言葉は力強く。
また堂々とした姿に周りのものも注目した。
「……」
対して。
ユリウスはノストの行動に不信がりながらも。
この機会に感謝をしていた。ノストのお陰で場が整ったのも確かであるし。
彼のお陰で発表する時間が出来たのも事実。
明らかに自分が不利となる状況にノストは望んでいるように思えるも。
意図が読めなかった。だけど。
「俺は……この学校を……生徒を守れるように生徒会を設立したい。だから俺は生徒会を設立するにあたって二つ……条約を付け加えたい」
今この場で言いたいことを言うべきだと判断した。
シーンと静まり返る空気は誰もがユリウスに注目しており。
これからの発言に期待が高まっているから。
あたりを今一度見回したユリウスは宣言するように呟く。
「その条約と言うのは生徒会長を罷免させる権利と生徒が生徒会長を選べる権利……だ」
「「「……」」」
「これらの条約は生徒会の理念を継続……もしくは意思を伝えるための約束であり。生徒会が私物化されないための条件だと思っている」
行き届いたユリウスの言葉に誰もが頷きながら……そして心からその言葉を聞いていた。
なぜなら。
「生徒会とは学生を守るために存在し、学生のための組織だ。今はまだ具体的なこと……どうやって守るべきか言えない。しかし……未来永劫、生徒会というものはこの理念を持つべきだと言うことを伝えたい」
彼の言葉に革新的な意味があったから。
もし仮に……この場にベガがいたのなら。
ベガはユリウスの事を称賛するだろう。それほどまでに革新的、あるいは“民主的”な言葉であるからだ。
そしてこの革新的な言葉故、ユリウスは確かな足取りで生徒会長という座に就ける。
「だから俺は生徒会長になった暁に生徒を守るルールを作りたい。誰であろうと侵すことの出来ない権利……それを学園に作りたい。……以上だ」
答弁を終えたユリウスは最後に力強い言葉をノストにぶつけた。
確かな決意を込めた言葉とユリウスの本気。
その言葉に感化されてかパチパチと……。
パチパチと拍手が響いた。
まばらにシトシトと続いた音。だがそれは徐々に大雨を思わせる万雷のものへと変わっていった。
「流石……ユリウスだね」
「そうですね」
同意する二人はリリィとセルジス。
あちこちから口笛を混ぜた賞賛やブラボーの意味を込めた言葉が沸き立った。
これら生徒の行動は明らかにユリウスの称賛に包まれ彼の言葉が伝わったことを意味した。
「ち!」
ただそんな中で納得できない。
拍手を起こさないものが居るのも一定数いた。
肥えた彼は舌打ちを混ぜながらチクリと刺さる一言を。
「生徒を守ると言って、なんで生徒を退学させるんだよ!!」
「「……」」
「お前のやっていることは無茶苦茶だ!! 結局生徒会は人を陥れる組織――「うるさいぞ……」」
ただそんな拍手をかき消すような罵倒も。
この様な場では意味がなかったと言えた。
ギロリと睨んだ瞳とたった一言で黙らせた言葉は格の違い……そう言った何かをノストは伝えていた。
「言っておくが豚……。俺はお前に庇って欲しいと言った覚えは無いぞ……」
「な?!」
「俺がこの場に出たのはこの学園の生徒とコイツの……顔を見るためだ」
指さしたノストはユリウスを見つめた。
そこにある感情はかつて抱いていたはずの憎しみではなく。
「悪いが俺は……ユリウス、貴様に追い出されるつもりは無い」
「……何?」
「俺は自分からこの学園を去るつもりだ」
「……」
何かを悟ったかのような表情であった。
それと同時にユリウスは複雑な感情を表した。
なぜなら彼はノストに対して確かな恨みはあったしリリィを苦しめた過去もある。
それを一概に……簡単に消化することは出来なかった。
口では彼を立場的に追い出すと言っていたも。
その感情はゼロとまで言えない。
でも。
「……わかった。自主的に退学するのであれば……俺も止めはしない」
「ふ……」
軽く笑みを返してこの場を去ったノスト。
ユリウスは確かな理性を持って彼を自主的な退学とさせた。
これによって一応この場で生徒会が生徒を追い出すと言った事態は避けられ、太った彼の反論は無意味なものになったであろう。憤慨するその肥えた生徒は何もできないまま席を後にした。
「……」
ユリウスはノストが何故ここまで執着なく学園を去ったのか分からない。
それでもユリウスは確かに新たな時代を作ったのだった。
「忙しく……なるかな」
これから起こることにユリウスは予想できなかった。
でもこれは確かな時代の幕開け。
民主的な運動の一歩として記録されるだろう。
裏で様々な思惑が渦巻いたこの学園は一先ずの終わりとなる。
これは世界に革命を巻き起こした……少女たちの物語である。
もしかしたらイラストを発注するかもしれません。
イメージ的なものなので悪しからず。
時期についてはまだ未定なので12月になるかも。
この章が終わりましたのでしばらく書き溜めさせてもらいます。




