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メルとルメール

 そこからの事をユリウスは具体的に覚えていなかった。

 と言うのもルメールがメルだと気づいて呆けていたから。

 いや、その信じられない出来事に幾つかの分析を頭の中で行っていたからかもしれない。

 根拠として……ルメールがメイドとしてあまり優秀でなかったこと。

 作物など様々な知識を……メイドとしては不要な知識を豊富に持っていたこと。

 瞳の色や髪の色が同じことなど。

 幾らでも気付くきっかけはあったのだと理解できた。


「……」

 

 今のユリウスには複雑な心境に包まれており。

 ルメールという存在が分からなくなったと言えた。

 それはこの学園生活が全て偽物だったのか。

 はたまたルメールの本心と言うものが何処にあったかなど。

 様々な混乱がユリウスの中に芽生えた。

 そして。


「――以上でメル様の挨拶は終わりです」


 教頭が締めの言葉を言った。

 パチパチと拍手喝さいが響く中。

 何人かの生徒……要するにルメールと交流のあった生徒は俯きながら暗い顔をする。

 メルとどのような関係であったのか分からないが。

 少なくともメルに害を与えていた存在は蒼白な顔面だったと言える。


「お、おい……。どうするんだよ」

「ど、どうするってお前……」


 困惑を交えた彼らの言葉は……次第に恐れを帯びるようになった。

 何か失礼なことをやってしまったとか。

 生意気な口をきいてしまっただとか。

 思い当たる節は幾らでもあるようで、それは普通通り暮らしていたメルに対して“失礼”だと思った自責の念が強い。


「……」


 ユリウスも確かにルメールに対して失礼なことは言った。

 でも。


「っ!」


 それでも……ユリウスはメルに対して何か言わなければと考えていた。




 メルの挨拶……及び事件に対しての謝罪は概ね好評。

 というよりも問題無く出来たと言えた。

 ただそれは生徒たちに怒り……という感情がないだけで。

 実際の所心身の傷については感知できないところもある。


「……」

「菓子とお茶です。どうぞ召し上がり下さい」


 悩みを抱えた表情のメルに職員が茶と菓子を出した。

 今、メルがいる場所は学園長室。

 談話を目的としたその場所はこれからの指針……この事件に対する終わり方を模索する場所で。


「事件解決の宣言は良しですね。後は何が必要でしょうか?」

「保護者への対応と今後の改善策の提示が必要になるかと……。平民への対応は学園側がしますので貴族側の対応はお願いします」

「……了解です。改善策に関しても警備を強化する方向でお願いします。金銭に関しては国側からの補助で賄うと言う旨も伝えて下さい。それから――」


 しばらく話し合いをしながら。

 もしくは書類を交わしながら彼らの話し合いは進んだ。

 事務的なことも含めて様々なことをしていく傍ら。


「学友の方とお会いになられないのですか?」

「……」

「仕事もほぼ終わった頃です。休み時間の間だけでもお会いになられれば気晴らしに成るかと」

「……気晴らし……ですか」


 提案した学園長に対してメルは苦く笑った。

 ズズっとお茶を飲み。

 映った水面に己の迷いが浮かんでいた。

 でも。


「私はメーテル・ラ・シュレインゴールとしてきました。私はそれを自覚してここに来ています」

「……」

「英雄姫という称号に相応しいだけの品格と気高さは……常に意識しないといけないので」


 クスリと笑ったメルは。

 せめて外だけはそういった事を装う必要があった。

 国のトップ代理として相応しい発言と品性。

 身内のものにだけ見せる顔とそうでない時の顔を作る必要があり。


「……分かりました。ならば私から告げることは在りません。ですが……」

「何でしょうか?」

「もし会いに来たのなら……しっかりと彼らの話しを聞いてあげて下さい」

「……」


 そう言って退出した学園長は外に彼らがいることを知っているようだった。

 ガチャリと開いた扉からぞろぞろと人が入り。

 入れ違うように学園長が退出した。

 中に入った彼らは顔見知りの関係……いや、友人と言っても差し支えない関係だ。

 彼らとメルだけになった空間で。


「……お久しぶりですね。皆様……。お茶でも入れましょうか?」

「いや……別にいい……です」


 普段通りの振る舞いをするメルと丁寧な言葉づかいで改めたユリウスが出会った。

 緊張をはらむユリウスたちは何を話そうか悩む傍ら。

 優雅にお茶を飲むメルを見つめた。


「「「……」」」


 本当にメルがルメールなのか。

 本当はどっちが本当の姿かなど。

 彼らは沈黙を持ってその解を探った。そしてリリィは偶然にもメルの視線が己の指にある宝石に向けられていることに気付く。

 ……。

 これが意味するところとは。


「楽になってもいいですよ……。メルさん」

「「「!」」」

「ふふ……。そう言ってもらうと……助かりますリリィちゃん」


 う~んと腕を伸ばしたメルはニコリと微笑んだ。

 そこには威厳の欠片もなく。

 英雄姫としての面影など全くなかった。

 要するにリリィの言葉と言うのは。


「ありがとね。私こういった格好するのは苦手なんですよ」


 英雄姫としてのメルでなく。

 一人の友人としてメルの名を呼んだのであった。


次の章ではダンジョンについて書いていこうと思います。

ワクワクするようなダンジョンってないですかね?

ダークな感じの奴が良いのですが……。

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