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プロローグ お誘い

予約も込めて書きました。

続きがあることを示唆します。

書き溜めたいので更新は未定です。ですが章の構成は出来ていますので近いうちに。

 装飾品の美しさはその国の品位と財力を示した。

 一つ一つの花瓶や飾られている鎧から……または壁に掛けてある絵画まで。

 美しさと質はここが国の中心、力を示すには十分であって。


「き、緊張しますね……」

「メ、メル様……作法は右足を前にして胸に手を当てる……でしたよね?」

「ひ、左足ですよ! いえ……右足だったような……」


 彼女ら……特にドレスを着たメルとイナバが緊張するのは当然だった。

 最後まで作法の確認をする二人はレッドカーペットの廊下を歩く。

 数々の調度品を横目に流す余裕すらなく。ぎこちない二人は不作法と言うよりも滑稽だ。

 だから。


「クスリ、作法はリニエスタ王国のものでよろしいと思われます。同盟の王がわざわざ他国の作法を真似する必要は無いですよ?」

「で、ですがカトリーナ……」

「その作法に従うと言うのは、ある意味で従順を示す意にもなります。大使と言う立場であれば別ですが、対等の関係を築くのであれば我が国の作法に乗っ取るべきです。何せメル様は王の代理人ですから」


 そう呟いたカトリーナは緊張を晴らすように笑顔で言った。

 確かにメルの立場は王の代理人でグラム教国を救った実績もある。そう言った意味で彼らとの関係は対等でなくてはならなくて。


「メル様らしくしてください」

「わ、分かりました」


 メルに微笑みを与えた。

 それと同時に式典への扉が開くのであった。




 グラム教国はかつて天使がその国を治めていた歴史があり。

 その史実上、白を基調とした。もしくは宗教色の多い建物が多かった。

 そしてそれは当然。

 この法典の間……国で最も高貴な場でも適用されており。

 四人のエインヘリヤルとメルらだけが入室を許可された場所だった。


「すごいです……」


 そんな雰囲気に呑まれてかメルの口からは感嘆の声しか上がらない。

 公爵家の一員として生まれたメルをもってしてもそこから述べられる言葉はなく。

 ひたすらに美しさに目を奪われた。

 細工された天使の像が微笑み、金糸で縫われた国旗がメルさを見下ろす。

 中心にある像は巨大でかつてこの国を治めていたグラムという名の天使であることが伺えて。


「これより、教皇様による祝詞の式を行います」


 ダスクの言葉……司会の言葉で。

 メルは己がいつの間にか儀式を受ける位置にまでついていたことを知る。

 引き締まった空気は清らかな香りを纏い。

 まるでここが天上の玉座であるように錯覚させた。


「……」


 コツコツと。

 メルらは沈黙を保ち。

 壇上に登る靴音に耳を傾けた。

 それは誰かが動いた証拠で式の進行……その重要な儀式に必要不可欠な人物が来たことを示した。

 小さな羽をその背中に付け、微笑みを携える中性的な顔立ち。

 金の長髪に羽を催した飾りが煌めき。

 銀の瞳がメルを捕らえる


「グラム教国教皇――ネルス・グラムが隣国の王代理人……メーテル・ラ・シュレインゴールに祝詞とエインヘリヤル任命の言葉を送ります」


 主役の登場……それによって雰囲気が一段と静かになった。

 一言一句、一挙手一投足に宿った神聖はネルスが超越者であることを示して。

 厳かで深い光がネルスから放たれているように錯覚した。

 慈悲を思う柔らかな笑みは同時にメルへ重圧と感動を与えるが。


「……」


 ゴクリとつばを飲み込んだメルはその圧倒的なオーラと対峙した。

 ただの人であれば飲み込まれてしまう存在感はネルスと言葉を交えることすら許さず。

 また動くことも敵わないが。


「――はい」


 メルは立ちあがりネルスと共に式を続けるのであった。




 式は終わり、メルらは用意された個室……客間に足を運ぶ。

 バタンと扉が開き。

 誰もいない個室へと三人の少女は足を進めた。

 華美に飾られた部屋と同じくらい。彼女らも衣服や身だしなみを整えており。


「ぷはぁ~……。」

「クスリ、メル様。だらしがないですよ?」

「だ、誰もいませんし、今はいいではありませんか……。本当に緊張したのですから……」

「そ、そうですよカトリーナ……。私も心臓が止まるかと思いました……」


 メルの言葉に同意を示したイナバもまた。

 豪華なドレスに身を包みながら。

 高級なソファーに沈み込んだ。

 仕方ないと呆れを浮かべるカトリーナは静かにお茶を入れた。

 片や個室のベッドに倒れ込んだメルは先の出来事を思い出しながら。


「こう……何というか、すごみがありましたね……」

「こ、怖かったです……。一国を束ねるものはああいった凄みを出せるものなんですか?」

「ネルス様だけです……。長年大国を纏めていらしたので、そう言ったものが自然と身に付いるんですよ……」


 感想を述べた。

 そう呟いたメルはネルスの佇まいなどを真似しようと鏡を見つめたが。

 見透かされたのかカトリーナがその様子を見つめて。


「人々を引き付ける魅力は既にメル様は会得しています。それが勇気づけによって行われるか引き付けによって行われるかの違いでしかないのですよ」

「?」

「英雄の定義によって……または戦い方によってそれらは異なるのでしょうね。メル様の英雄は皆の夢を実現する者です。片や」


 つぐんだ言葉はメルに察してほしい言葉で。

 見つけて欲しい言葉だった。

 答えを言うのは簡単だが、成長するには解を言うのは悪手である。

 故に。


「――これ以上は話しません。茶会でお会いして見つけて下さい」

「ええ?」

「英雄像は一つではありませんからね。見聞を広める意味でもネルス様とは話し合うべきです」


 微笑んだカトリーナにメルは頬を膨らませた。

 意地悪をされた気分のメルは一時間後に控えた茶会……それに参加することを決めたのであった。


この作品を通して伝えたいことがあるのですが、皆さんに伝わっているのか疑問です……。

評価や感想は欲しがりませんので。

気軽に読んで下さい。

私の作品制作の意欲はこの伝えたいことに集約しています。伝わるまで書き続けたいです。

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