アズベルの村
ポイントありがとうございます。
会議の進捗のほどは。
敵の戦力とその組み合わせによる意見交換まで進んでいる。
要するに情報交換であって。
対戦経験のあるエドバンからラドルフについて語られる。
「〈金拳のラドルフ〉は単独A級冒険者だ。接近戦を得意とするモンクで、金拳を冠する通り金竜を狩った者としても名を馳せている」
通り名から彼の得意とする戦い方まで。
とにかく語るべき点を抑えたところ。
そして。
「……対個人での対処か、対多での戦い。モンクである以上、対一を得意とするが」
「対多であるなら犠牲者を覚悟するべきだ。加えて拠点に行くわけだから混戦も予想される……。ラドルフを引き付ける必要があるかもな」
オーガとジーンが呟く。
顎に手を当て考え込むのはラドルフの対処にこの場の誰かが。
関わらないといけないから。
適任者は誰か。その答えは。
「俺が行ってもいいか?」
「エ、エドバンさん?」
立候補したエドバンにイナバが困惑を表す。
なぜなら、彼は一度ラドルフとの戦いにやぶれたのだから。
ただ。
「今回、俺の役目はラドルフの足止めだ。メル嬢を救出したのちお前らも助けに来てくれるんだろう?」
「確かにそうだが……」
「正面からの攻撃は人数の多いギース達が適任だ。俺と共に陣頭指揮を執る。裏口からの侵入はお前たちに任せるぜ」
「だけど……」
それでも不安をぬぐえないジーンは。
正しくそれが机上の空論でしかないことを知っているから。
正面からの攻撃にラドルフと〈ニーズヘッグ〉の構成員が来るのは織り込んでいるだけど。
ブラディやその他の幹部が来ることを見越して配置していない。
つまり。
「囮役も兼ねているのは俺も理解している。ただよう、この正面からの攻撃に〈ニーズヘッグ〉の戦力であるラドルフが来るのは高い確率だ。ギルド長としてもここで決着をつけないとな」
決意を固めたエドバンが苦く笑い。
他の者たちも彼が適任だと納得する。
後は。
「……エリス様にも一応声はかけたんだよな」
「ま、魔力の回復が完全ではないそうです。兵は街の方に配備され、討ち漏らした敵と街にいる戦力をそぐために配備するそうで」
戦力的な支援はそれだけであった。
ただ、街に彼らがいるお陰で教会に戦力を裂くことが無くなったのはよいことだ。
それと。
「後はその場の判断に任せよう。ギースとオーガが調べられたのはメル嬢がいると思わしき本拠地の位置と屋敷の間取りだ」
「ただ、皆さんに渡したものは屋敷を改築する前のものでして。差異があることは了承してください」
「……」
情報の収集はギースたちのお陰で簡単に集まり。
準備のほどは出来上がっていると言えるだろう。
まだまだ不安要素が有るものの、彼らはメルの救出の為に動き出したのだった。
ただ……それよりも一足早く。
荒廃した村の残骸はかつてここで行われた非道を表し。
近くにある山道は不気味を漂わせてここがその場所であると示した。
「メル様……ここがアズベルの村です」
「ここが……ですか」
屋敷から逃げたメルは順調な道のりでアズベルの村へとたどり着いていた。
手にはアスクレピオスの杖を持ち。
左手の巻かれた包帯からは血が滲む。
息を切らしながらも何とか歩ききったメルはその光景を前に。
「……何があったのですか?」
「……」
異様な光景に疑問を覚えた。
異様……その言葉が示す通り、ここの建物は全て燃やされており。
死体も念入りに焼却されているのが分かったから。
加えて、この村にいる全員を……一人残らず殺せるほどの人数を考えると。
「……アズベルの村については、〈マルバス〉を封印してから話しませんか?」
一人、答えを知る人物が先を急ぐように山の道に入った。
かつて立ち入りを禁じていたであろう。
門や忠告の看板などは壊されていて。
「なぜ、ナガリさんは先を急ぐのですか?」
ピタリと止まった足が。
ぎこちなく。
ナガリの怪しさに反応した。
面白いと言うことに自信が持てて良かったです。
作戦会議は結構好きで、もう少し語りたかったのですが。
情報と場所が悪かったかな。




