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再会を果たすとき

誤字脱字があればよろしくです。

 襲撃の時間は理解した。

 ただ問題はその襲撃者の名前と人数について、ジーンは情報を得られなかったことだ。


「それでよ――」

「……」


 今も聞き耳を立てているジーンは他の者たちの会話を聞きながら。

 更なる情報を集めた。

 しかし得られるものと言ったら、時間とその疑わしい襲撃者の見た目だけ。


「噂ではそいつは女の姿をした化け物らしい」

「具体的じゃないな……。顔をゆがめた醜女だったら隣向かいにいるが?」

「簡単に人を殺す輩を指したんだ。見た目は美しい少女だが、実力は上級の冒険者に匹敵する……」


 言葉を震わせながら喋る男と口笛を吹いて、話し半分に聞くもう一人の男。


「ピゥ~。口説き落としたくなるほどか?」

「その場合、落ちるのはお前の首だ」


 その言葉で男たちの休憩は終わり、建物の中に入った。

 取りあえず調査した結果から推論を導くしかなく。


「一人……? 少女……? 場所と時間は東カジノで今日の夜……」


 不確かなことだらけだが、ジーンは己の装備を整え備えた。




 さて、ジーンは少し早い時間に会場へと足を踏み入れ。

 中の様子を伺っていた。


「警備が固い……な」


 一言感想を呟いたジーンは慣れない煌びやかな空間で博打を打つ者たちや警備に勤しむ者たちを観察した。

 それで得られたことはカジノが通常通り経営されていることと景気がいいくらいなもので。


「ふぁ~、いかさま……しているね~?」


 あくびを交えた聞き覚えのある声。

 ジーンはあの時のあの少女であると断言できなかったが。

 それでもその声に注目したのはこの言葉がカジノ側の不利益を告げたからに他ならない。

 一気にそこへと周りの目が集まった。


「い、一体何のことでしょうかお客様?」

「はぁ~、左の裾……そこにカードがありますよね~?」

「な、何のことだか……それよりもお客さん。部屋の奥に行きませんか?」


 状況を説明するに、フードを被った彼女は勝ちすぎたと言うことだろう。

 絵を合わせる簡単な遊戯はドラゴンの絵が三枚と捻じれた角の絵が三枚。

 ベットされた金額と彼女の手を見れば。

 カジノがどうなってしまうかなど、想像に難くない。

 いや、それよりも。


「お嬢ちゃん、奥の部屋でお金を渡したいんだ……。ここでその金を見せたら襲われちまうぜ?」

「ふぁ~、ガタイのいいおじさんがそんなことを言うと……脅迫に聞こえるよ~。肩を……触らないで欲しいな~。痛いし~」


 少女の背後から現れたもう一人の男がディーラーとアイコンタクトをする。

 ガタイの良い彼は他の人間に比べて一回り体が大きく頬に残された傷が真面な人間でないことを告げていた。

 ガシリと掴む力がこもる。


「はは! 華奢(きゃしゃ)な体だ! それでどうだ? おじさんたちの話しを聞く気には、なったかい? それともまだ眠いか?」


 ズッと少女の耳元に近づいた男は嫌らしく笑う。

 迫力を増した笑みはオーガのように獰猛で鍛えられた体は鋼のようだと比喩できる。

 そんな……そんな、絶対的な強者を前にして。

 誰もが少女は怯え、涙を流していると――。


「けひひ、この眠気――例え竜に体を喰らわれようと、身を焼かれる激情にさいなまれようと……覚めない」


 あくびを噛み殺した少女は、そのまま指を……デコピンをしようと男の額に向けた。

 見た目ひ弱な少女のそれはこれから起こる超常に予感すら与えず。


「何をするつもりだ?」

「ふぁ~、お仕置きですよ~」


 無邪気な笑みは隈を残す瞳と気味悪く笑う口から作られる。

 この中でただ一人、男の未来を知っている少女……〈マーリン〉は。

 ピンと弾いて笑った。


「ぐおおお!!」


 突如体が吹き飛んだ男は叫んだ。

 羽虫が壁に激突するが如く。

 男は飛び。

 現象が酷く矛盾した結果は華奢な〈マーリン〉を怪しむと共に不気味さを与えた。

 けひひと、笑い声が周りに恐怖を与えて――ゴクリと唾をのむ。


「こ、殺せーーー!」




 その言葉をかわきりにカジノの秩序は乱れ、盗みと暴力によって支配されるようになった。

 そもそもこのカジノに来る連中はガラが悪いものが多く。

 加えて“噂”によって集められた盗人もいるのだ。

 たった一つの乱闘でこうなる事は予想できた話し。


「おい! てめぇ!」

「うるせえ! お前もいかさましたんだろう?!」


「お、おい! ま、まてって!」

「黙れ! 早く金を全部よこせ!」


 と言った具合に乗じたものが会場に広まり。

 いつしか拳と血が飛び散る戦場に変わった。

 怒号と人を殴る音、机がひっくり返り派手な音がなれば。

 刃物の煌めきで怯える声まで。

 そんな乱闘の中で、最初の騒ぎ。

 中心と言える場所は。


「て、てめぇーーおぁ!」

「く、くたばっーーうえ!?」


 変わらず〈マーリン〉が無双している状態だった。

 軽々と大男を吹き飛ばしていく様は夢を見ているかの如く非現実的。

 それが何によって引き起こされているのか。

 彼らの混乱した脳では理解できなかった。

 ただ。


「あぶねぇな!」

「うん~? おやおや、君はいつぞやの少年だね~」


 吹き飛ばした男を避けたジーン。

 ニヘラと笑う〈マーリン〉と苦い表情のジーンが再会を果たすのであった。




展開は決まっています。

この章は簡単に終わるかも。

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