プロローグ チーターと姫
ベガのこととメルのことで書き直しました。
内容が全く違うのであしからずお願いします。
これはまだ”チーター”が名を馳せていた時の別の話し。
運命の出会いは未だ訪れず、物語は動かず……。
されど、戦争は……戦は起こる。
とある仮想空間の荒野。
曇天の空が雨の匂いを運ぶ。
幾つもの武器が刺さるそこは正しく戦場と断定できる場所であり今もなお激闘は続いていた。
否。
「はあ、はあ!」
息荒く汗を流す一人の戦士がいた。
可憐に白竜の鱗で飾ってある鎧と聖剣のような高貴な輝きを宿す剣を装備し。
闘志を燃やしていた。
ただそれも無駄な抵抗だった。
構えていた武器を下ろし。
「嗚呼、これは、……これは……あははは!」
感嘆し笑った。
乾いた笑いを浮かべるイケメンの戦士は状況的に負けていることを理解した。
各地で奮闘していた仲間たちも既に死んでいる。
爆発と一陣の風が吹き抜け静けさを纏った時。
戦士は三度戦場をぐるりと見た。
その強さに呆れ称賛する言葉をかけようと思ったがそれは彼のプライドが邪魔をする。
だから、名を言うだけで終わった。
「……〈御旗を立てる乙女〉」
幾つもの旗が乾いた荒野に刺さっていた。
天を貫く様に曇天にまっすぐ伸びる旗の光はこの旗が普通では無いことを記した。
領域型エンチャント、横顔の白銀の女騎士が無表情にこちらを見る。
「……〈独眼の竜〉」
真っ黒な巨体の周りに黒煙が上がる。
武者の鎧を身に纏うそれは知性を宿した生命体。黒龍は戦士を油断なく睨み応戦できるように身構えていた。
息を吐く様に黒い炎が口から零れ地獄の熱さを伝える。
「〈湖面の騎士〉」
蒼を飾る騎士の周りには鏡のような水たまりが足元に広がっていた。
荒野で有るにも関わらず、透き通った水は騎士を中心に移動する。
ただ静かに、観察するように戦士を見つめる。
「〈戦場を穿つ火縄〉」
火縄の銃が空に浮かんでいた。
八丁あるそれらを指揮するのは同じく火縄銃を持つ優男。
硝煙香る戦場でキセルを吸いながら一息つく男に隙など無かった。
そして。
「くくく、だからこそ二つ名は〈歴史と歩むもの〉なのか?」
遠くにいる和服を着たシルエットに戦士は苦く笑う。
少女と言えるほどの身長を持つ彼女は数千の死者を束ねながら、同時に戦士が呟いた名前らの召喚者である。
圧倒的武力を単一で持つ少女こそ、最強を冠する召喚術士。
少女の黒い影と浮かぶように見える紅い瞳が宣言する。
「残念じゃが、お主の歩む歴史はこれで終まいじゃ」
とある異世界の屋敷。
金髪の少女が寝室で寝ていた。
それを愛おしく見つめる屋敷の主人は起こさないように静かに寝室の扉を閉め退出する。覚悟はできた。あとは娘の無事を祈るばかり。
廊下を歩き、暗がりに声をかける。
「シフォン」
「はい?」
派手な色合いの主人にやる気なく答えるのは子供のシルエットと浮かぶ瞳。
杖を持ち、若さを宿す声色でやる気なく答えた。
「娘――メルを隣国のリンベイルまで頼む」
「……」
主人の声が木霊して。
廊下のシャンデリアの光が揺らした。
不安を煽る様に主人の顔を照らし、シフォンに影を落とす。
ただ痛いだけの沈黙がしばらく周りを支配して。
「……リオンはどうするの?」
「あいつも連れて行く。と言っても命令を無視して勝手についてくるんだがな」
ため息をつきながら仕方がない奴だと笑う。
〈シュレインゴールの絶剣〉と異名を持つ彼ならば主人を安全に王都まで運ぶことが出来るだろう。
若干の安心をシフォンは覚える。これで彼にも憂いが無いと言えた。
とは言え。
「リオンはいいとして……お前たちは本当にこれで良いのか?」
「勿論、これはボクたちが志願したことだ。グッテンバルグの首長も悪いようにはしないさ」
「……第一騎士団も第二騎士団もか?」
「当然さ」
答えたシフォンは暗がりの中で笑った。
彼らもまた、リオンと同じくらいに仕方がない奴ら。
肩を竦める屋敷の主人は決意新たに背を向けた。
今夜、ここを出るのだ。
「……別れはいいのかい?」
「これ以上ここにいると迷う。言葉はいらない。伝えたいことは全て伝えた」
「……分かった。それじゃあボクらは明朝にでるよ」
二人はその言葉ですれ違う。
カツカツと歩く音だけが木霊して、彼らは準備するのであった。
結末は変わりません。
度々の変更、申し訳ありませんでした。
変えたところはベガがいたところを明確にしなかった点。
元の設定と変わらずです。