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攻防の末は

改めて、言葉が弱いと言うことを理解しました。

 地面の爆発は戦闘開始の合図と成った。

 各々武器を構えて臨戦態勢を取る。

 その中で、武器を持っていないメルはブラディから離れるように引き。

 ブラディにいたっては。


「武器を抜くつもりは無いよ。なぜなら君たちは彼一人で十分だからねぇ」


 卑しく笑うブラディを無視して、メルは未だ燃え続けるそれを見た。

 その魔法は焔の花がさくようなエフェクトが特徴で〈ファイヤーボール〉よりもかなり上位な術と言えるだろう。

 正しくベテランの魔術師のみが習得可能な難易な魔法。

 けれど。


「貴様が! 貴様が攻撃したのだな!」

「!」


 笑みを深めたラドルフは炎から躍り出る。

 チリチリと燃える髪は先端のみで効いているようには見えない。

 そして。


「っ!」


 圧倒的な殺意によってシェリンは判断が鈍った。

 魔法を唱えて更なる攻撃を加えるか、逃げて距離を取るか。

 彼女は判断に遅れてその結果。


「死」


 一言、手向けのように。


「ね」


 一瞬で距離を詰めたラドルフは鉄球のような拳をシェリンに振る。

 だけど。

 ガキン!


「む!」

「俺を忘れんな!」


 間一髪のところでエドバンが大剣を振った。

 それを拳で受け止めたラドルフ。

 エドバンとしては全力で振るった一撃なのだ。

 だけどそれをものともしない。まるで、巌を叩いたかのような感触が大剣に残った。

 すかさず次の攻撃、モンドの矢がその肉体に放たれるが。


「ははは! 飛び道具は効かない!」

「!」


 矢を肉体の身で弾くほど。

 〈鋼鉄〉のスキルによって彼は強化されていた。

 だから、唯の矢や鉄剣などでは傷をつけることが出来ない。

 そう、“ただの”であるのならばだ。


「む!」

「っ! 魔剣を使ってもかすり傷かよ!」


 獣耳を生やしたジーンが油断をしていたラドルフのわき腹を裂いた。

 それは言葉通りかすり傷に等しいもので致命的な傷ではない。

 致命的では無いのだが。


「お、おまえ!」


 明確な殺意がジーンに向けられる。

 つまるところ、ジーンはラドルフを殺せると言うことなのだ。

 例えかすり傷であっても、何十も斬られれば失血で死ぬ。

 そうでなくとも、ジーンの魔剣を脅威に思ったのは違いない。

 ラドルフは敵をジーンに定め。


「〈(じゅう)(がん)〉! 装備スキル〈咆哮〉!」

「うお!」


 獣のごとき瞳のラドルフが吠える。

 ラドルフの闘気がライオンの形となり辺りに衝撃波を与え。


「ぐ!」

「がは!」

「!」


 吹き飛ばされるエドバン、シェリン、ジーン。

 ダメージこそ軽微なれどそれは相手の体勢を崩す。

 もしくは吹き飛ばす目的で使う物なので、効果的ではあった。

 すぐさま体制を整えたジーンにボっという加速する音が聞こえて――。


「〈(てっ)()う抜き(ぬきて)〉!」

「っ!!」


 抜き手が振るわれる。

 魔剣の並外れた身体能力を持つこの体でやっと躱せた一撃は纏う風の刃によってジーンの頬に少しの傷を残した。

 まともに食らえばどうなるのか。想像に難くないだろう。

 そして次に来る連続攻撃を予感したジーンは。


「〈ハイジャンプ〉!」


 空に逃げる。

 一旦距離を置こうと考えたのだ。

 〈ラドルフ〉の戦い方は正しく手数と力による圧倒。

 近距離は分が悪く、〈スキル〉の数も違う。

 だからこそ、彼は空に逃げたのだが。


「ひき肉にしてやるよぉおおおおおおおお!」


 狂乱の笑みが眼前まで届く。

 己の死を予感させた一瞬は。


「〈鎧天使〉!」


 メルの天使によって救われた。

 それはジーンを庇う形でジーンの前に出たのだ。

 間に入った天使は鎧で覆われていて、〈スキル〉も使っていない拳では砕けない。

 でもラドルフは例外で。


「邪魔だ!」

「! そんな?!」


 ただの拳で胴体を貫く。

 光となって消える天使は役目を終えるが。

 威力を殺した拳はジーンに吐血。

 と言うダメージだけで辛うじて終わらせる。

 再び地上に戻り。


「ははは! これは殺しがいがある! 一人ずつ! 丁寧に! 嬲ってやろう!」

「ごめんだね……。そして、死ぬのはお前だよ」


 そう言って血を滴らせ、不敵に笑うジーンは一つの可能性に気付いた。

 正しくそれは一種の賭けに近いが。


「大丈夫です……。ジーンさん」

「……」


 メルの近くに降り立っていたジーンはメルが絶望していないことに気付いていたから。

 策があるのだろう。

 それは自信に満ちたメルの青い瞳を見れば明らか。

 取りあえずジーンはもう一度“同じ攻防”をしようとして――。


「あはは、ラドルフ! 君、狙われているよ?」

「ははは! 殺してやろう! ぐちゃぐちゃにして! ひき肉にして! 原型が無くなるまで――」


 効く耳を持たない。

 猛獣が人の言葉を聞かないように、彼もまた一度燃えた闘争心に言葉は届かない。

 一旦待ったをかけるブラディだが、それを無視するラドルフに対して。


「……あのさ、だからね……」


 ザシュ。

 ラドルフの鋼鉄の肩に痛みが走った。

 猛獣に無知を討つかの如く。

 血が……血の鎌がラドルフの肉をえぐっている。


「お?! ああああ!!」

「狙われているって言ってるじゃん」


 戦闘中も三日月のように笑みを浮かべているラドルフだが。

 この時は引き釣った笑みになっていた。

 なぜならその背後に立つブラディは、強い怒気をはらんでいたから。



メルに新しい属性が追加されるかも?

作者の知らない場所で、勝手に動いていた?

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