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迫害の理由

物語が動くのはこの次あたりです。

 メルは朝に弱いタイプであった。

 貴族の娘であるメルは自由な時間が多く、惰眠を貪ることが多くあったのも理由だろう。

 そんなメルが自発的に目を覚ます。


「ふああああ……」


 長い金髪には跳ねたようなアホ毛。

 瞼こすり開けた瞳は同じく金色だ。

 だらしなく欠伸をしたメルは、顔を洗おうととテントの外に出る。

 そして。


「すごい……」


 晴れた空にはワイバーンが飛び、牛のようにゆったりと食事をするのは地竜だ。

 広い牧場で草は揺れ、巨大な樹がそれを囲む。

 それらすべてを見守るのが高い山々と『原初の竜樹』と呼ばれている巨大な樹。

 メルは目を輝かせてこの光景を見ていた。

 鼻に吸い込まれた空気は早朝を告げ新鮮な……爽やかな気持ちを運ぶ。

 そんな……道に触れたメルの心情を表すのなら。


「異世界みたい……」


 だ。




 さて、しばしこの光景を堪能していたメルは今の“自分の姿”に気付いていなかった。

 そこへ遭遇したのはこの2人。


「おはようございます。メル様」

「おはようで、ございます。メル様」


 赤い髪の女騎士、レオジーナと白の短髪の男騎士、スレインが挨拶をする。

 きりりとした真面目な赤の瞳のレオジーナと優しさを持つ群青の瞳のスレイン。

 2人は朝の訓練でこの場に居合わせたのだ。薄っすらと汗をかく2人は鎧姿で身だしなみが整っていた。

 振り返り、挨拶を返すのはメルで。


「おはようございます!レオジーナさん。スレインさん」


 勢いよくメルは振り向いた。メルは2人にとって敬愛する主君である。

 だから――彼らは必死にこらえていた。


「「……」」


 驚いた顔をした次の瞬間、彼らは顔を下に向けメルを見ないようにした。


「えっと、どうしました?」


 近づくメルに、2人は背中を向ける。


「じ、自分は……ぷふ、顔を洗ってきます」

「自分も……ぐふ、髪を洗いたいと思います」


 スレインとレオジーナは早足でメルから遠ざかった。

 怪訝な顔をするメルに周りの騎士たちも同じように遠ざかる。


 「……?」


 不安と訝しさを混ぜた表情のメルであるが、彼女はまだ気づけない。

 困った顔をするメルに一人の少女が近づく。


「メルよ……。昨日は無理をさせて、すまなんだ」


 和服を着たベガだ。

 黒と赤が混ざった着物には袖に、金糸で二匹の鯉が描かれている。

 普段は活発な少女であるが、昨日のことが尾を引いているのだろう。

 俯きながらもためらいがちにメルへとより。


「あ、ベガちゃん!」


 振り返ったメルの“髪型”を見て、ベガは爆笑した。




「な、なんで言ってくれなかったんですか?!」


 爆発に巻き込まれたような髪型を直し。

 今はストレートヘアになっていた。


 現在は貴族の……メルの日課である散歩をしていた。

 護衛と友達のベガとで朝の軽い運動をする。


「まあまあ、落ち着いてよ。メルちゃん」


 エルフ種で領主専属魔術師であるシフォンはメルをなだめる様に言う。

 ハーフエルフと同じように、ゆったりとした服を着ているのは森の中でも動きやすいようにした結果だった。

 民族衣装に近い、緑色で葉っぱのデザインが施されている服であるが、それは機能と美を兼ね備えたものだ。


「過ぎたことを蒸し返してもしょうがないぞ。取りあえずあの食堂で何か美味しそうな匂いがするのだが?」

「ベガ様、そんな食べ物でメル様の機嫌が――」

「確かに美味しそうなお店ですね!」

「「いいんだ」」


 ベガの甘言? に応じるメル。

 スレインとレオジーナが声をそろえた。


 食いしん坊であるメルは、異国の地での食事を楽しみにしていた。

 本当であれば、自由に食べ歩きたいところだが――。


「……やはり警戒しているようですね」

「いい感情を持たないのは仕方がないことだろう」


 大衆食堂に入ったメルたちを、奇異の視線で見るのはハーフエルフたち。

 人の感情に機敏なメルは苦しそうに笑いながら、注文をする。

 むすっとした顔のハーフエルフが来て。


「お勧めは何ですか?」

「……」

「きょ、今日の天気、晴れが続くといいですね」

「……」

 

 苦く笑うメル、対して無表情なハーフエルフ。

 無愛想な店員にシフォンはメルの分も含め注文する。

 理解した店員は伝票にそれを示し、厨房へと消える。

 他の客たちも、自然と会話が少なくなっていた。


「……どうして、皆さんは私たちに敵意を持つのでしょうか?」


 疑問を持つのはメルだ。

 お嬢様として、屋敷でぬくぬくと育ったメルは敵意というものに慣れてはいなかった。

事実、ハーフエルフたちとは分かり合えると思っている。

 そこがベガとの最大の違いである。


「利益の追求と宗教観の違いが生んだ古典的な問題だよ」


 教える気が無いのだろう。メルに分からないように答えるのはシフォン。

 事実これは珍しくないことで、メルに教えても仕方がないことであった。


 利益の追求? 宗教観の違い? 古典的と言うことは昔からあったことかなと推論するもそれ以上は進まない。。

 意味が分からないメルは必死に考えるも。

 結論が出ないまま、再びシフォンに聞こうとしたが先を越される。


「すると何じゃ? 貴族、商人が関わることか?」

「間接的だけど冒険者、騎士も含まれるわね。国としては彼らに立ち退きをして欲しいところだけど、建国紀でも書いてある通りここは彼らの領地なのよ」

「……ベガ様もそういった問題。国ではありませんでしたか?」

「さあ、覚えておらんのぅ」


 スレインがベガに探りを入れるが、誤魔化される。

 結局、メルは理解できないまま食事をするのであった。


仕方がないことですね

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