無茶はダメ
行き当たりばったりですが、ご了承を
「う~ん」
寝返りを打ち枕の高さが、ずれる。
それによる違和感がメルは再び寝返りを打たせ、そして――。
「う~、きゃ!」
ベッドから落ちる。
頭を揺らし、寝ぼけていたメルはここが何処か考えた。
「うう~」
頭をさすりながらメルは辺りを見た。
それは丁度、ゲルと言われる簡易的なテントのような場所で。
「ああ、そう言えば……」
と思いだそうとしていたメルは蚊帳が開くと同時に、ビクリと体を震わせる。
現れたのはベガだ。
「どうじゃ? 気分の方は?」
カチャカチャと茶碗がなり運んできたのはお粥のようなもの。
エルフの主食であるそれは消化が良く病人食として、最適なものだ。
「あ、ありがとうベガちゃ――」
そう朧げに返事をするメルは思い出す。
甘い口づけと優しさを交わらせた初めて。
顔が赤くなり、耳が異様に熱くなる。
向けるベガの笑顔にたじろぎ、その視線は自然に唇へと向かう。
桜色に潤うそれは青春の甘さを伝えたもの。
ハタハタと顔が熱くなり、アホ毛も下を向いた。
「その調子なら、元気そうじゃな」
「え、いや、その甘かったな~ではなくて……柔らかかったな~じゃなくて!」
ぜえぜえと息を乱し、深呼吸をするメル。
神妙な趣で。
「こ、ここは何処ですか?」
思えばこれが真っ先に浮かんだ最初の疑問であった。
推測するにここはテントの中であり、簡易的に作られたものだと理解する。
モンゴルにあるテント、ゲルのように移動式であるそれは旅の必需品だ。
柔らかいベッドの上で休むメルは徐々に状況を理解する。
「メル様!メル様!」
慌ててテントの中に入るのはスレイン、レオジーナそしてシフォン。
それから遅れて入るのは軍医を務める騎士だ。
「怪我や体調が悪いと言ったことは無いでしょうか?!」
「だ、大丈夫ですよ。皆さん大げさすぎですよ」
詰め寄ってくるレオジーナ、彼ら気圧されながらも答えるメル。
焦りを抱いた彼らの表情と駆けた態度でメルをどれだけ思っているのか分かるというもの。
ふと、視界の端にベガが退出するのを見た。
「ちょ、ちょっとベガちゃん?!」
「……少し散歩するだけじゃよ」
そう呟き、退出するベガを追おうとしたメル。
上半身を持ち上げ、ベッドから出ようとするがシフォンに止められる。
「いけません。メル様」
「え、でもベガちゃんが――」
シフォンがメル様と呼ぶのはそれが立場を強調したのと、真面目なことであったからだ。
普段であればメルちゃんと呼んでいるシフォンがそう呼称するのは滅多にないことだ。
シフォンの気迫に押され、動きを止めたメル。
「あの者はメル様を危険にさらしました。しばしの接近は控えるべきです」
怒りの瞳で告げた言葉はベガとの距離を測るよう。
含めた叱咤。
ベガには勿論、無鉄砲なメルに対してもだ。
「……」
沈黙するメルにスレインやレオジーナも怒り心頭であるも。
何も彼らはメルを憎しみで怒っている訳でなく。愛する故怒っていた。
なので。
「ご、ごめんなさい」
素直に謝るメルもそれが愛ゆえだと分かっている。その言葉を聞いて周りの大人たちは柔らかい笑みを浮かべ。
「ごほん。やっぱりお前たちはメルちゃんに甘すぎる」
「……シフォン様、呼び方」
「むっ」
しまったと言う顔のシフォンに周りの騎士も笑う。
つられて笑うメルも元気が出る。
けれども思い出すのは退出する際に影を落としていたベガだ。
曇った表情を見せるメルに反応するのはレオジーナ。
「どうしたのですか?メル様?」
「ベガちゃんのことが気になって……」
メルがベガのことを好意的に見ているのは誰が見ても明らかである。
ベガに助けられたと言う理由が最も大きいが、それと同時に憧れの感情があるのは確かであった。
端的に言うと姉妹の関係。
直接の血の繋がりはないが、ベガがメルを可愛がっているのも事実だ。
でも、その関係を快く思っていない者がいる。
「ふん。放っておけばいいと思います」
「レオジーナ……」
「だって、スレイン。私の可愛い、可愛いメルちゃんを危険にさらしたんですよ?罰は受けてもらいます」
プリプリと怒るレオジーナ。
ベガがいなければ彼女が姉貴分だった。
レオジーナは確かにメルを可愛がっていたし愛しているが、当事者のメルは残念なことにレオジーナのことをお姐さんと思っている。
その食い違いによりレオジーナは未だに姉のポジション付けないのだが、その勘違いに気付けない以上それの発展は無いだろう。
「でもメル様とベガ様のお陰で自由になれたのですからここは大目に見ては?」
「はあ、本当にスレインは甘いわね……」
シフォンたちがベガに対して良い感情を持っていないのはメルも知っている。
けれど
「何だかんだ言いながら、皆さんもベガちゃんを悪く思っていないのかな?」
聞こえない声で呟いた。
若干の嫉妬があるもののそれでも、メルの友人としてベガを受け入れていったのだ。
「ば、馬鹿な。なぜあいつがこんなところに!」
怪我をした兵士は足を引きずりながら歩く。
数千もいた兵はたった一匹の魔物によって蹂躙されたのだ。
兵士の片目は血によって塞ぎ、それでも逃げる彼は雪を滑るように降りた。
雪が積もるそこは”原初の竜樹”が生える高い山。
切り立つ峰が行く手を阻み、渓谷は圧迫するように頂上への道を作る。
「はあ、はあ、せめて楽に殺してくれるとありがたいんだが……」
追い込まれた男は岩肌を背に座り込む。
言葉が通じる存在ではないが、やけくそ気味に呟いた。
吐く息は白く、耳は凍っていた。
逆に彼を追っていた者は赤い炎を吐き、マグマのように硬く赤い鱗に覆われている存在。
「グオオオオ!」
火山の噴火口に住むそれは魔物の中の絶対者、ドラゴン。
圧倒的な炎の息吹が男を包むのにそう時間はかからなかった。
ご都合が入るかも




