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野獣と焔

派手に戦ってくれました。

描けたのですが、伝わるのかどうかが分かりません……。

 取り囲まれているジャンヌに更に増援が加わる。

 投げられた男の二の舞にならないように彼らは一生懸命に威嚇して威勢を出した。

 猿の威嚇に似たそれに解さないジャンヌはただ暇そうに。


「邪魔ですよ」

「ほざけ!!」


 正面からゾルに急かされた男が襲い掛かる。

 不意を突けば良い物の彼はゾルに恐怖して正常な判断が出来なかった。

 ともあれ、正常に判断しても彼の死は脱がれぬもので。

 グサ。


「ぐええええええええええええ!!」


 剣を腰だめに構え突っ込んだ男、半身で逸らすとジャンヌは足を引っかけ男を転ばせた。

 転んだ男は仰向けに倒れその上から御旗を突き立てられる。

 男の腹から血が噴き出し、藻掻けば藻掻くほどグチュグチュと肉が擦れる音が聞こえる。

 叫び白目をむきながら彼はまだ生きている。

 腹を刺されたくらいで人は死なない。


「次は誰がこの御旗の元に集うのですか?」


 無表情なジャンヌの頬に血がへばりつき、背後の月が残酷に照らした。

 残忍さを目の当たりにした海賊は戦意を落としたが如何せん人数が多く。また彼の死を見て慎重になった。だからしばらくの時間が必要となるのは確かでその間に。


「そうだよ。手前らはそうやって肉壁になっていればいいんだよ」


 ズシンズシンとレオジーナに歩を進めるゾルは満足げに彼らを評価した。

 元々ジャンヌはレオジーナの邪魔するつもりは無かったのだが、それでも暇をつぶすには丁度良いと考えた。適当に相手をしつつレオジーナとゾルの対決を見守った。


「お前の名前は?」

「警羅団団長、レオジーナ。貴方は?」

「ゾル。家名も無いただの傭兵だ」


 槍の端――持ち手の部分を片手でゾルはそのままその重量を持って、重力を持って振り下ろした。




 鋼鉄で出来たそれは獲物としてはかなりの重量を誇る。

 刃の部分はそれこそ特殊な材料でできており、マナサンゴやオーガシャークの牙を使って出来た一級品で“並の武器”ではないのだが今は黙する。

 横に転がったジャンヌは彼を評して。


「……その腕力は認めましょう。上空からの打ち下ろしは正しく私を死に至らしめるもの」


 バキと音が鳴り、ひび割れがゆっくりと広がり亀裂が重なった。

 たったの一撃は先頭の小さなスペース――甲板を完全に破壊し。

 そこに有ったはずの女神像は壊され海の藻屑へと変わる。

 三分の一が壊された船であるが大丈夫、まだそれは辛うじて浮いていた。


「動くんじゃねぇよ。船が沈んじまうだろうが」

「沈むことに違いは無いでしょう。ただ燃えて沈むか砕け散るかの違いでしかないでは?」

「違いない」

 

 横跳びで躱したレオジーナは回避行動をしながら剣に炎を集めていた。

 腰だめに構え、横一線に切り裂くその斬撃は真空の刃と変わり、加えて。


「〈空斬・艶笑(えんしょう)〉」


 女の笑い声が響き真空の刃に炎を付与される。

 魔剣の力は通常のスキルに付与される形で効果を発揮し襲い掛かる。

 ゾルは避ける?

 否。


「しゃらくせぇ」


 槍を構え軽く一振り。

 真空の刃は真っ二つに別れそれぞれデッキに当たり燃えた。

 消火作業に精を出すものはいない。ゾルはジャンヌの足止めを継続して命令しているので彼らは消化できなかった。

 船が沈んでいる錨に引っ張られるように傾く。


「おおお!!」


 バランスを崩したものから海に落ちる。

 数人の弱者が海に落ちるが、強者は未だ傾いた船の上で戦う。

 睨み合うレオジーナとゾルは重力に任せるように体を敵に倒して。


「〈金剛一槍〉!!」

「〈烈火の嘲笑〉!!」


 傾く船で疾走。

 金に輝いた槍と女性を象った炎が激突して爆発。

 船が更に傾き。

 ジャンヌは旗を立てることでデッキにとどまり、他の者たちも武器を突き立てることでなんとかその場に残る。

 未だ二人は走り回った。彼らがすれ違うたびに剣戟は鳴り響く。

 無駄に激しく動き回ってレオジーナたちが戦うのは動かなければバランスを崩して海に落ちるからだ。地上を走る様に壁や燃え盛る炎の中を走りまわる。

 剣戟の音は確かに船を破壊する音で、炎が船内を燃やす。

 豪撃が木片をちりばめて。

 未だ戦闘中の二人は笑う。

 ギン!


「ぐははは!」

「うふふ」


 弾き飛ばされたレオジーナはそのまま傾いたマストを足場に登り始めた。

 追うのは勿論ゾルで軽快に颯爽と上を目指す。

 帆に炎が燃え移り彼らは例えるなら炎の草原の中で戦っているようだった。

 飛び移り一合。

 蹴りや足場を狙って相手の体制を崩し二合。

 軋めく船の音などお構いなく。

 燃え上がる炎に興味なく。


「付与魔法〈従う水〉」

「!!」


 ゾルの槍に水が渦巻く。

 剣戟はレオジーナが鳥の如く舞い、一撃すらも与えさせない。

 しかし徐々に減っていく足場を考えればレオジーナの不利は確実。

 だからゾルは勝負をかけた。


「逃げ場は無いぞ?」

「ですね。だから――」


 レオジーナの髪に魔剣の炎が乗り移った。

 二人の武器はそれぞれ相手の顔を映して銀に煌めいた。


「ここで決めます」


 妖艶に笑うレオジーナの背後で爆音と船が壊れる音が木霊した。

 歯をむき出して構えを取ったゾルは獣の如くマストを駆けた。



ストックが無くなったので、投稿は来週になるかも。

崩れ行く建物や乗り物は戦っていてワクワクします。舞台が流動的なので派手にしやすいですが、伝わるのかどうかが微妙。

嗚呼、力量不足が浮き彫りに……。

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